『日本暗黒史・情無用』の歴史的意義

夏のフィルムセンターは、追悼特集で、今日は安藤昇。

脚本は佐治乾で、監督は工藤栄一。

中部地方らしい温泉町に安藤昇が一人で、そこの博徒組長で旧友の安部徹のところにやってくるところから始まる。安部は、娘の桜町弘子と安藤を結婚させ、安藤はそこで自分の組を作る。

安藤も安部も古い博徒意識が強く、愚連隊ではないと「強きをくじき、弱きを助けるのが博徒だ」と言う。

安藤昇は、戦後の新しい集団で、ヤクザではなく渋谷の愚連隊と言われたと私は記憶しているが。

そこで、安藤は、小池朝雄の組とも共同してパチンコ屋を基にして勢力を増やしていくが、そこに安藤の旧友でもある大阪の城南組(山口組のことだろう)の渡辺文雄がやってくる。

当然に渡辺は悪人で、安藤と小池の間を割くように画策し、安藤は小池を殺し、最後は渡辺が権利を握るはずだった埋立地の競艇場の建設予定地で、渡辺文雄を射殺する。

結局、安藤昇の映画は、一匹狼映画になる。

私は、世評ほど工藤栄一は好きではなく、これもさして出来は良くない。

ただ、これは後の深作の映画『仁義なき戦い』の実録ヤクザ映画へとつながったと言えると思う。

脚本の佐治乾は、深作欣二の作品を書いていた人だが、ややサディステックなところがあり、ドライな作風だった。

それを笠原和夫が、関西風の人情劇を加味し、このような実録の集団劇にしたのが『仁義なき戦い』だったと言えるだろう。

そう考えると、これらの作品は実録ヤクザ物への過渡的な作品だったと言えるのではないか。

フィルムセンター

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