意外にも強かった落語的センス 『忠治旅日記』など

昨日は、全国小津安二郎ネットワークの映画上映研究会があり、雨の中フィルムセンターに行く。

上映されたのは、伊藤大輔監督の『忠治旅日記』『斬人斬馬剣』、小津安二郎監督の『和製喧嘩友達』『突貫小僧』

『斬人斬馬剣』、『和製喧嘩友達』『突貫小僧』は、特別参加の柳下美恵さんのシセサイザー演奏付き。

どれも一度はフィルムセンターやCSで見たことがあるが、やはり見る度に新たな感想があった。

伊藤の2本の内、『忠治旅日記』は、3部作の内の第3部『御用編』に他作品(マキノ雅弘のもあるようだ)を足した物で、当時は地方で上映する際に、上映時間を確保するためにそうしたようだ。

伊藤大輔は、俗に「移動大好き」と言われているが、『忠治旅日記』では移動のシーンは少ない。

むしろ、敵方のへまな子分たちの行動には、落語の与太郎的な動きがあったのには驚く。

サイレント時代の活弁の語り口は、落語、講談、浪花節などの江戸時代来の語り芸の伝統が取り入れられていたが、映画の作り方にも伝統芸が反映されていたのだと思った。

小津安二郎や山中貞雄らの詩的な映画には、俳句の伝統が反映されていると思う。

実は、伊藤は俳句の聖地・松山の出身で、中村草田男とも交友があり、俳句はサイレント映画に大きな影響を与えていると思う。

サイレント時代、実は日本映画は世界的に見ても非常に高いレベルにあったのだが、それはこうした伝統的な芸術、芸能の遺産があったからだと私は思う。

終了後は、すぐ近くの美々卯で懇親会、小津安二郎作品の助監督もされたことのある元松竹の監督の田中康義さんからいろいろとお話を聞く。

中では、松竹の助監督で、早稲田の劇団の先輩でもあった横堀幸司さんのお話が最高だった。

かつて交友のあった雨宮真由美さんからも、横堀さんは、木下恵介絶対主義の「木下教」的な方で、木下監督について話出すと止まらないとのこと。横堀さんについては、私の先輩のHさんからも聞いたことがあるが、相当にユニークな方のようだ。

また、松山市でご活躍の伊藤大輔研究家の田部さんとも話すが、伊藤の戦後の作品では田崎潤主演の『下郎の首』がベストだということで一致する。

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