『与太郎戦記』

落語家春風亭柳昇の自伝の映画化。
師匠の春風亭柳橋の独自の語り口が懐かしい。

旧帝国陸軍内務班については、『真空地帯』や『人間の条件』のような非人間性の局地として描く作品があり、一方に『二等兵物語』や『拝啓天皇陛下様』のように軍隊をある種の天国とみなす映画もある。
多分、どちらも誇張されていて実態とは異なるのだろうが、この映画で主人公フランキー堺が兄弟子の春風亭柳好から教えられる「軍隊は要領だ」というのは、多分一番正しいに違いない。
日本のどの社会でも、基本的に集団主義だから、まずはその集団のしきたりや伝統に習熟し慣れることなのだから。

作品としては特別に面白くないが、助演の女学生・南美川洋子がきれいだった。
若い看護婦になる女優の名が分からなかったが、多分水木正子だろう。この辺の女優は、大映末期だったため、余り有名になれずに消えた。皮肉にも一番名を残したのは『でんきくらげ』『しびれくらげ』等の際物映画の渥美マリである。

監督の弓削太郎は、大映の中堅監督だったが、倒産後一人で山で自殺し日本映画史上に名を残した。
大映倒産の悲劇の一つである。
川崎市民ミュージアム

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