『JAM TOWN』

今年の1月に神奈川芸術劇場で上演されたミュージカルで、やっていたのは知っていたが、行かなくて正解だった。

西寺郷太の音楽はまあまあだが、話(斎藤栄作脚本 演出錦織一清)がひどく古臭い。横浜に係留されているボートバーでの音楽好きの様々な人間のドラマである。そこのオーナーの筧利夫の、別れた妻の娘が現れて、音楽コンテストへ応募して・・・と言うもの。

横浜にまつわる事象を並べただけで、どこの今の横浜ではなく、昔の横浜についての幾つかのイメージを利用しているだけである。あえて言えば、俳優浅野忠信の話を女性に置き換えているように見えた。

そもそも横浜のイメージや魅力は・・・などと言っても始まらないが、端的に言えば、明治以来絶えず変わりつつある町の魅力だと思う。そこにあったのは、戦前までは「港ヨコハマ」のエキゾシズムであり、戦後は米軍基地が発散していたバタ臭さである。だが、1980年代以降、米軍基地の接収解除が進んで、異国性は急速になくなった。

ただ、そうした残滓はまだ生きていて、それが横浜の魅力だと言えなくもない。

事実、私も1960年代の大学時代に日活映画を見すぎたために、

「横浜に行けばいい女に会えるだろうと思って横浜市に就職してしまった」のだから。

現実の横浜は、優秀な日活映画の美術の作る幻想の町であり、はるかに田舎だったのだから。

ただ、今も横浜には他の都市にない、良いところがある。それは、城下町ではある旧領主やそれに連なるエスタブリッシュメントがいないことである。

その意味では、非常に自由な町だとはいえるだろう。

このニュー・ミュージカルとは言いつつ、ひどく古臭い音楽劇を見て、「横浜に行こう」と思う若い男女はいないに違いない。

ともかく筧利夫と、その元妻役の東風万智子の歌のど下手さにはあきれた。到底金を取るレベルではない。

衛星劇場

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