『スパイダーズ・大進劇』『タイガース・世界は僕らを待っている』

2本ともグループ・サウンズ全盛時代に作られたアイドル映画。出来は良くない。
「この程度でも客は入るさ」との感覚が見えるのは不快。筋はどうでも良いから、ヒット曲さえ流しておけばファンは何も文句を言わなかったのか。

日活歌謡映画には、ジョニー・ティロットソンのヒット曲『涙くんサヨナラ』やスパイダーズの『夕陽が泣いている』などの佳作があったが、中平康のこの映画はひどい。だいぶアルコール中毒が進行していたのだろう。
密輸宝石と秘密書類をスパイダーズの連中が取り違えて持ったことから起きるドタバタ劇。堺正章と井上順の駄洒落に多くの笑いを依拠しているのは、手抜き。
脇役に、植村謙二郎、柳瀬志郎、波多野憲らの古い役者が出ている。
真理アンヌが下手な台詞を無表情で言うと、鈴木清順の『殺しの烙印』の殺し屋NO・2になる。
また、後にロマン・ポルノで見ることになる役者も悪役や刑事役で出ているが、この頃はそんなことになるとは夢にも思ってもいなかったろう。

タイガース映画も、アンドロメダ星からシルビー姫(久美かおり)が来て起こす喜劇だが、全体にひどくチープ。
姫様の手下が天本英世と浦島千賀子の二人だけとはひどい。
笑わせるのは警視庁刑事の小沢昭一の怪演。タイガースの曲を浪花節で唸るのはすごい発想。

監督和田嘉訓は、東宝で俊英をうたわれ28歳の処女作『自動車泥棒』は大変前衛的な映画だったらしいが、その後長く干されたり、娯楽作品を作らされる。
最後は映画界を諦めソニーに入り定年を全うした変り種。
中平も和田も、日本映画全盛期に期待された監督の一人だが、最後は不本意な結果だったようだ。

これで「歌謡・ミュージカル映画」名作選は終了。
明後日からは、「日本の撮影監督特集・2」になる。
フィルム・センター

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