『顔役と爆弾娘』

監督の筧正展は、私はかなり評価しているが、脚本がつまらないものが多い若尾徳平なので、危惧したが結構面白かった。役者が良いので見られる。

顔役とは親分がムショに入っていて留守を預かっている三橋達也、爆弾娘とは、下駄屋の娘の中島そのみ。下駄屋の親父が沢村いき雄、古臭い人間で自分の店を「江戸時代来の老舗」とえばって、少々おかしいと思うが、まあいいだろう。

江戸の人間は普通は草履を履いていたもので、下駄を履くのは助六のように少々変わった人か、花魁のような連中である。要はかっこを付けた人間であり、関東の人が下駄を履くようになったのは、明治以後の薩長の連中が来てからだとされている。

これに対する靴屋が藤原釜足と都家かつえで、この都家と沢村の掛け合いが非常に上手い。その他、おでん屋の宮田洋々など、東宝の脇役総出演。上原美佐がいたらしいが、どこかは不明。

場所は、上野と浅草で、彼らは商店街をやっているが、やくざが嫌がらせをやってのさばっている。組を預かっている三橋は賛成できないが、部下の中丸忠雄(顔の大げさな傷が笑える)らが乱暴を繰り返している。

三橋は、キャバレーの支配人で、歌手で組長の愛人が上条美佐保。上条は、NDT出身で歌手としても活躍し、テレビにもよく出ていた。

中島はおてんば娘で、歌手を目指していてレコード会社のテストを受けるが不合格。

だが、町でチンピラに脅されていた金持ちの息子を助けたことから見初められ、会社社長高田稔の家に「行儀見習い」のテストに行くが、母の一宮敦子の逆鱗に触れ落第する脇筋もある。

そんな中、親分が保釈で戻ってくるが、これが中村伸郎とはびっくりだが、さすがに迫力がある。この辺の配役もさすがである。

最後、三橋は暴力行為に反対して中丸以下に暴行を受けるが、町の連中が、中島そのみの意見で説得されて、現場に大挙駆けつけて暴力団は駆除される。

この民衆が駆けつけるのは、マキノ雅弘の映画によく出てきて私は嫌なのだが、ここは不快にならず。

エンドは、三橋が下駄屋の修行に入るところで終わり。

東宝の大部屋連中を上手く使った楽しい作品だった。

ラピュタ

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