貝山友弘氏、死去

先日、元東宝のプロデューサーだった貝山氏の死を伝えていた、84歳。

貝山氏は、東宝で青春映画などを作られ、特に仁科明子主演、小谷承靖監督の『はつ恋』は、傑作だったと思う。その後、フリーになり、フジテレビ等と組んで『ストロベリー・ロード』の大ヒット作も作っている。

製作

  1. 1964.10.04 世界詐欺物語 日本篇  ユリウスプロ=東宝
  2. 1965.12.05 馬鹿と鋏  東宝
  3. 1966.08.31 3匹の狸  東宝
  4. 1968.03.16 100発100中 黄金の眼  東宝
  5. 1968.03.16 カモとねぎ  東宝
  6. 1968.06.22 サラリーマン悪党術  東宝
  7. 1968.11.23 狙撃  東宝
  8. 1969.09.10 弾痕  東宝
  9. 1970.08.04 赤頭巾ちゃん気をつけて  東宝
  10. 1972.04.05 薔薇の標的  東京映画
  11. 1972.05.25 白鳥の歌なんか聞えない  東宝
  12. 1973.09.01 化石の森  東京映画
  13. 1975.03.21 雨のアムステルダム Two in the Amsterdam Rain  東宝映像=渡辺企画
  14. 1975.11.01 はつ恋  東宝映画
  15. 1977.10.29 姿三四郎  東宝映画
  16. 1983.07.23 南極物語  フジテレビジョン=学習研究社=蔵原プロダ…  … チーフプロデューサー
  17. 1991.04.27 ストロベリーロード  東京宝映テレビ=フジテレビジョン  … エクゼクティブ・プロデューサー

その後は、オーディオ評論家として近年は活躍されていたようだ。だが、彼の仕事で一番評価されるべきは、1970年代に東宝レコードで『日本の映画音楽』というシリーズを出されていることである。

伊福部昭先生から、黛敏郎、林光、八木正夫、村松禎三、武満徹、間宮芳生、真鍋理一郎らの映画音楽作品のアンソロジーのLPで、当時は非常に画期的な企画だった。

このシリーズで優れているのは、それぞれの作曲家に貝山氏自身がインタビューし、それぞれの監督との音楽の作りかたについて書かれている点だった。

例えば、林光は、監督について、二つのタイプがあるとし、独裁型とオーガナイザー型があるとしている。

前者には、新藤兼人がそうで、演劇で言えば、俳優座の千田是也がそうだったとしている。後者には、大島渚が典型で、スタッフからキャストに至るまで、全員が参加して映画作りに挑むのだと言っている。

また、黛敏郎も、監督には、音楽を具体的に指示する人と、まったくのお任せの人がいるが、『赤線地帯』での溝口健二は、「映像を冷笑するような音楽を作ってください」と言われ、あの電子音での奇妙な音楽になったのだという。

それを津村秀夫が「映画に合っていない音楽」として黛を批判したのだが、これは津村の方が全くの的外れだったのだ。

実は、昨年から、この貝山氏のシリーズを再度見直し、加筆して本にしようと、えにし書房の塚田氏と考えていたのだが、これは無理になった。

何とか別の方法で、貝山氏の業績を受け継げないものかと思っているところである。

ご冥福をお祈りしたい。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする