『首』

弁護士正木ひろしが、昭和19年に栃木県で起きた警官による暴行致死事件をあばくため、死体の首を切り取った事件。
脚本橋本忍で、監督は好きな森谷司郎だったが、こういう真面目映画は苦手なので、見ていなかった。
大変真面目に作られた作品だが、途中で首を切る件になると、ブラック・ユーモアになる。

東大雇員の首切り人が最高。大久保正信という役者で、『七人の侍』にも出ているそうだが、河童のような形相で、淡々と首切りを行う。
墓場を暴き、東大法医学教室に運ぶため、被害者の首を切り落とした後の宴席で、正木をはじめ死者の家族など他の者はさすがに食が進まない。
だが、大久保は上手そうに水炊きを食べ、酒を飲む。

上野まで汽車で運ぶ途中、経済警察の手入れを受け中身を聞かれると、
「人の首だよ」と言い、警官から逆に
「いい加減にしろ、こんな臭いもの。デッキに出ろ」と言われ窮地を脱す。

正木は、戦後は『真昼の暗黒』の八海事件等で大変有名になるが、かなり強烈な個性だったようだ。
最後は、丸正事件で偽証をさせたということで起訴されたはずだ。
そのくらいの人間でなければ、戦時下で死体の首を切って証拠にするなどは出来なかっただろう。
フィルムセンター

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