残った場面は 『忠臣蔵』2本

フィルムセンターの「発掘された映画たち」で、現存する最も古い『実録・忠臣蔵』で、横田商会製作で、牧野省三監督、尾上松之助主演の1910年頃の作品。

なんと松之助は、浅野内匠頭、大石内蔵助、さらに清水一学の3人を演じる。

いくつかの作品をつなぎわせたらしく、巴うの子はじめ、多くの活動弁士の説明付き。

興味深いのは、立花左近の話がバージョン違いで数本出てくることで、この話は勿論大嘘なのだが、日本人には大変に好きな挿話なのだろう。

高校の時、世界史の教師から、考古学上の化石について、本当にその化石から全体を推測できるのかについて言われたことを思い出す。

彼は言った、様々な人間や動物がいたとして、今日に残るのは標準型が一番多いはずで、その意味では統計学的に考えても、今に残る化石や遺跡から、その時代のものを推論してよいというのだ。

となると、数本も残っている立花左近の話は、日本人が非常に好きだということになる。

もう1本の『忠臣蔵』は、映画説明者の坂本一郎さんが、京都の骨董屋で見つけたものだそうだ。

缶には『忠臣蔵』と書かれていたが、店主は「ゲイ・ポルノが上映していた映画館から大量に出て、その1本なので、ゲイ・ポルノだ」と主張していたが、坂本さんは、「サイレント時代のゲイ・ポルノも珍しくて面白い」と買ったのだそうだ。残りは、全部アメリカの大学が買って行ったとのこと。トランプはひどいが、アメリカの文化への視点は凄いと評価できる。

作品は、横田商会の『忠臣蔵』で、こちらの方が欠落は多いが、オリジナルのようだ。

いずれ、坂本さんなどの活弁を付けて公開してもらいたい。

フィルムセンター

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