『バイ・バイ・ラブ』

この映画は、1970年代の自主製作映画時代には、大変に有名だったが、筋を聞いて見なかったのは正解だったとわかった。

もともとは35ミリで予算700万円で始めたそうで、実際は16ミリになったが、撮影、編集等はきちんとしている。大学時代に勅使河原宏監督の映画を手伝った藤沢勇夫は、東映東京で助監督をやっていたが、辞めてこの映画を作った。

話は、特に意思がなくフラフラしている青年ウタマロの田村連が、街角で万引き女・ギーコの一条雅に会い、愛し合うが、本当は男だったというもの。

偶然に警官の拳銃を奪えたことから逃亡し、警察との銃撃戦に至る。『俺たちに明日はない』や『明日に向かって撃て』など、当時ののニューシネマへの憧れが強く、映画遊びといえば言い過ぎだろうか。ともかく行き当たりばったりで、ドラマが存在しないのは大変につらい。

最後、警察との銃撃戦でウタマロは死んでしまい、ギーコは一人残される。

悪口を連ねたが、1970年代当時、これだけの作品を作ったのは大変だったと思われ、700万年は嘘ではないだろう。

家庭用のビデオカメラで何でもできる現在と異なり、カメラとフィルムを入手するだけで50万円はかかったと思う。その上に、編集、録音、宣伝があるのだから、スタッフ、キャストはロハでやってもらったとしても大変なお金が要ったはずで、それなりのスタイルはあるので、多くの自主上映会で歓迎されたのも当然だっただろう。

一条雅は、本物のゲイだったらしく、化粧すると完全に女性に見えるので、ウタマロが愛したのが実は男だとは最初はよく分からなかった。

この映画に大変に貴重な映像があるとすれば、冒頭の部分で新宿駅南口の、円形の踊場のような小さな広場に中華料理屋、居酒屋、バーなどがあったところが映っているところである。

今は、駅南口の高島屋に行く部分である。

フィルムセンター

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