『赤道の下のマクベス』

新国立劇場ができて20年で、井上ひさし作品と同時に、鄭義信の『たとえば野に咲く花のように』『パーマ屋スミレ』『焼肉ドラゴン』は、数少ない成果の一つだったことは間違いないとこだろう。この3作は、日本の戦後史の裏側を描いたものだが、今回は敗戦時のことが主題である。

1947年夏、シンガポールのチャンギ刑務所、そこに死刑を宣告された6人の男がいる。

3人は日本人で、3人は朝鮮人。

彼らは、ビルマの泰麺鉄道建設でのイギリス人捕虜への虐待が容疑なのだ。泰麺鉄道建設については、映画では『戦場にかける橋』があるが、ここで私が初めて知ったのは、捕虜への監視役の軍属として朝鮮人が雇人として使用されていたことである。

戦前、朝鮮人、台湾人には兵役の志願制はあったが、徴兵制は敷かれていなかった。理由は、いうまでもなく、彼らの反乱を恐れたからである。

男は、おっさんと呼ばれる年上の元軍人の平田満、元中尉で「大東亜戦争は聖戦だった」と信じる浅野雅博、朝鮮人の芸人で『マクベス』を愛読している池内博之などで、題名の『赤道の下のマクベス』とは、ここでマクベス的なドラマが展開されるのではなく、この戯曲の引用と朗読とは肩透かしだった。

最後は懲役20年に減刑された男以外の全員に死刑が執行されるだろうところで幕となった時、「これで終わりなの、だからどうしたの・・・」と私は正直に思った。

ただ、昨日は、私の時間の誤算から、渋谷からタクシーで行ったのに、15分遅れて開幕付近は見ていないが、この辺は筋売りなので、観劇の印象に関係ないと思うが。

横浜市の小林君は、それを言うと「久しぶりに泣きましたよ」とのことで、結構印象は違うものだなと思った。

もちろん、若い世代に、B・C級戦犯や朝鮮人使役の問題を知らせるのは意義のあることだとは思うが。

音楽は久米大作で、これはいつものように良かった。

新国立劇場

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