『新二等兵物語・吹けよ神風』

1959年に公開された松竹京都作品、いつもの伴淳三郎とアチャコが陸軍内務班で虐められる話だが、三木のり平、南道郎、立原博らの東宝の俳優、さらに当時の松竹の清純派女優の有田正子が出ている他、元東宝の野上千鶴子も出ている。この辺は、芸能界における伴淳の顔の広さ、人脈によるものだろう。

と言って話に新味はもちろんなく、部隊長の山路義人は凶暴かつ狂信的な軍人で、裏では芸者で妻の関千恵子や野上千鶴子らの花柳界に軍事物資を横流しているなど腐敗している。

昭和20年7月の広島で、山路は戦局の不利なことは知っているが、「必ず神風が吹く!」と老人ばかりの部隊の士気を鼓舞している。その下につき追従しているのは南道郎、立原博など。

アチャコは炊事班にいる万年二等兵で、自動車部隊に配属された伴淳三郎と再会する。そこには偽ろうあ者の三木のり平もいて、この二人のやり取りはさすがに上手くて実に笑える。

部隊には、唯一の善人でインテリの将校がいて誰かと思うと、石黒達也で、大映の時代劇では悪役専門だが、非常に演技の上手い人で私は好きである。

ここで主題となるのはいじめと同時に、軍隊の指揮命令の朝令暮改で、部隊は海岸に塹壕を掘らされたかと思うと止められされ、ついにはなぜか軍事物資を積んで下関に移動させられる。

だが、アチャコには、もらいっ子の太郎(目方誠、後に美樹克彦の名で歌手になる)が部隊に会いに来るというので、石黒は、アチャコを病人にして広島に残してあげる。

山路以下の部隊が下関につくと誰もいず、戦闘部隊は九州に移動したといわれ、広島に戻れ都の命令。仕方なく海岸に野営すると、遠く広島にキノコ雲が上がる。

山路は「あれが神風だ!」と喜ぶが、もちろん原爆。

そして、広島からアチャコもなんとか来るが、死んでしまう。

石黒は、「広島に残した俺の罪だ」と謝るが、伴淳は言う、

「悪くない、悪いのは戦争だ!」と。

そして、8月15日の玉音放送になるが、天皇の声ではなくアナウンサーの代読の放送。

自決する南道郎、山路以下は物資を持ち出して逃亡しようとし、伴淳はピストルでそれを阻止してハッピーエンド。

衛星劇場

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