『闘牛に賭ける男』

1960年の日活の正月映画、主演はもちろん石原裕次郎と北原三枝、二谷英明と三角関係になる話。石原裕次郎・北原三枝の結婚前の最後の作品。

昔、テレビで前半部を見て、またこれは太平洋テレビの社長のことだと聞いたことがあり、それが闘牛とどう関係するのかと思っていたが、最後まで見てやっとわかった。

太平洋テレビは、日本のテレビ界の初期に、『ララミー牧場』などのテレビ番組の輸入で大儲けした会社だったが、脱税の取調べを受け会社は倒産した。

新聞社事業部で、スペインから闘牛を呼ぶ興業の担当だった裕次郎は、スペイン国内事情の理由で(スペイン風邪というのが笑える)興業が中止になり、地方に左遷されたので社を辞めて「呼び屋」を友人の高原駿男と始め、アメリカの中古テレビ映画の輸入をして大成功し、丸ビルに事務所を持つまでになる。だが、映画製作を手掛けるようになり、既存企業から妨害を受けて潰れてしまう。なんだか後の石原裕次郎の石原プロモーションのことのようにも思えるのは皮肉だが。

そして、今度はスペインの闘牛を呼ぼうと決心してスペインに行く。これにお嬢様の北原三枝と財閥の御曹司の二谷英明との恋愛が絡む。しかも、スペインでの3人の回想によって話が語られるので、非常に分かりにくい。脚本は舛田利雄とは多くない山田信夫。

舛田利雄の本では、試写を見た堀久作社長が筋が分からなくなってしまい、「回想場面禁止令」が出たそうだが、確かに物語は分かりにくい。

日本のスペイン酒場で、元画家で頭がおかしくなり、スペインで妻を殺した芦田伸介が、「赤だ、赤だ、血の色だ!」と叫ぶのがおかしい。マドリードの他、パリ、マジョルカ島などが出て来て、「ヨーロッパ縦断ロケ」は大げさだが、当時は外国旅行は大イベントだったのだ。

以前は、小松原庸子バレエ団など、スペイン舞踊は日本で非常に人気があったものだが、今はかつてほどではないようだ。

音楽がいつもの黛敏郎ではなく、佐藤勝なので、映画の感じも多少違う感じがする。

日本映画専門チャンネル

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