『ヘンリー5世』

かつて国立劇場がスターとして坂東玉三郎を作ったと言われたことにならえば、新国立劇場が唯一作ったスターは浦井健治になるだろう。

彼の主演で、シェークスピアの『ヘンリー5世』が行われているので、見に行く。予約のとき、結構埋まっているとのことで、初台駅で降りると、若い女性がいるので「あれっ」と思う。プロムナードに武蔵野ファッションカレッジの札があり、授業で観劇に来ているのだろううが、非常に良いことである。

以前の大作『リチャード3世』と同じく演出は鵜山仁で、彼は歴代の新国立劇場の芸術監督の中で一番成果を残したと思われ、演出作品も良かったと記憶している。

ただ、鵜山は、はったりのない性格らしく、今回では、1幕目はメリハリがなく正直に言ってあまり面白くない劇だった。

フランス王に祖父を持つ、イギリス王のヘンリー5世は、教会の許しも得て、フランス王位と領地を求めて海を渡ってフランスに攻め込む。この辺の人間関係は複雑でよくわからず、日本人のわれわれは置いてけぼりにされた。

二幕で、5万のフランス軍に対し、1万5千と劣勢のイギリス軍の勇猛で勝利するのは、イギリスの観客には大変にうれしいのだろうが、私にはわからない。あえて言えば、新東宝の『明治天皇と日露大戦争』を見るような喜びなのだろうか。

『リチャード3世』と同様に、浦井健治は良かったと思うが、後に妃となるキャサリン妃の中島朋子は適役だっただろうか。多くの配役が前作と重なっていたが、多少は変えても良かったのではと思った。

後ろにいた若い女性が言った「岡本健一も年取った、50歳なんだね」

新国立劇場

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