井上作品で初めて感動した 『素晴らしき男性』

『リオの情熱』を見に行ったついでに見た、井上梅次監督作品の『素晴らしき男性』が非常に面白く、井上映画で初めて感動した。以前、NHKBSで見て、大変によくできていると思ったが感動はしなかったのだが。

『勝利者』『嵐を呼ぶ男』など日活のみならず各社での井上梅治監督作品は結構見ているが、上手いとは思うが、いつも騙されているような感じがして感動したことがなかった。

だが、このメトロ劇場という商業演劇の小屋の若いスタッフ、踊り子たちの「バック・ステージもの」は、脚本も井上だが非常によくできている。もちろん、西島大や兒井英雄らの手も加わっているのだと思う。

ここで井上は、石原裕次郎と北原三枝には、自然な演技をさせ、周囲の脇役には結構くさいが上手い芝居をさせている。

二人の周囲の若者として西村晃、笈田敏夫、白木マリ、柳沢真一らがいて、みな上手い。キドシン(木戸新太郎)がいるのが不思議だが、当初は喜劇的筋書があったのかもしれない。裕次郎、そして待田京介の父が三島雅夫で、母は清川玉枝というのも素晴らしい配役である。

石原裕次郎をはじめ、待田京介、西村晃までがミュージカルシーンで踊り歌うのは笑ってしまうが。また、踊り子の北原三枝と富豪のお嬢様の月丘夢路のダンス合戦もあり、月丘の踊る姿は非常に珍しいが当然にも上手である。

筋は結構混み入っていて、金持ちとの結婚を目指す北原は、途中まで金持ちの息子の待田と婚約するが、最後は当然にも石原裕次郎と一緒になる。そして、実は石原裕次郎と待田京介は兄弟なのであった。その姉が月丘なのである。

北原の姉が新珠三千代で、その貧乏な彫刻家というのが大坂志郎で、月丘の恋人で貧しいバイオリニストが金子信夫というのが笑えるが。

ここで井上らが言っているのは、結婚は金や地位じゃない本当に愛し合う人を得ることであるとのことだ。この年は、現天皇の皇太子が正田美智子さんとご成婚された時で、日本中が恋愛結婚が一番だと思い込んでいた時代だった。

『リオの情熱』は、日本航空がブラジルへの空路を初めて行った記念の映画のようだ。別れ別れになっていたCAの安西響子が、リオに行って父の藤田進と再会する話。

手紙のやり取りでは、藤田は農場主のはずだったが、冷害で無一文になり三津田健の農場の労働者になっていたが、三津田や江川宇礼雄、木暮美千代らの好意で、農場主を装うが最後はバレるが、三津田の息子の大木実と無事結婚するという他愛のない話。

一応、リオには安西の他、木暮、藤田、大木は現地に行っているようで、新東宝の大作である。

シネマヴェーラ渋谷

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