『砂の器』のキャステイング

俳優の加藤剛が亡くなっていたそうだ。81歳。

加藤剛と言えば、映画『砂の器』だが、その前にテレビ映画の『人間の条件』での主人公梶の人気は大したものだったらしい。小松方正に本に書いてあったと思うが、テレビ映画の『人間の条件』の地方ロケに行くと、大変な群衆だったのにびっくりしたそうだ。映画で新珠三千代が演じた妻は、藤由紀子が演じ、これも話題になり、元は松竹だった彼女は大映に入り、田宮次郎と結婚することになる。このシリーズは、大映テレビ室の製作で、後に山口百恵の「赤いシリーズ」のヒットを作る大映テレビ室の最初のヒット作で、これによって大映テレビ室は基礎を固めることができた。

さて、加藤剛と言えば映画『砂の器』の主人公の作曲家の和賀英良だと思う。

原作者の松本清張は、黛敏郎をモデルに書いたようで、小説では電子音を駆使するなどの前衛音楽の作曲家になっている。それを映画では、芥川也寸志作曲の音楽にふさわしいような古典的な曲の作曲家になっている。

また、この映画で興味深いのは、加藤剛は「悪役」であり、刑事の丹波哲郎が善人になっていることだと思う。普通、加藤と丹波と言えば、悪役は丹波で正義の味方は加藤である。これを逆にしたあたりは、監督の野村芳太郎の才知を感じる。

さらに、加藤剛の愛人でクラブの女は島田陽子で、政治家佐分利信の娘が山口果林というのも、今は知名度は逆だと思うが、当時の女優としての大きさからはそうだったというのも面白い。

今や、千葉県知事となった森田健作が下っ端の刑事として出てくるのも面白い。

戦後の映画、演劇界で活躍された俳優の冥福を祈る。

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