「役づくり」のあった役者 樹木希林

樹木希林が亡くなり、個性派女優とあるが、私は違うと思う。

今や死語と化した「役づくり」があった女優だったと思う。

彼女が有名になったのは、テレビの森繁久彌主演の『七人の孫』での、東北出のお手伝いさん役だった。森繁とのやり取りの上手さで評判になったが、この時彼女はまだ20代前半で、しかも東京生まれの江戸っ子だった。彼女は、役としてお手伝いさんを演じていたわけで、そこには「役作り」というものがあったのだ。

今は、「存在感のある役者になりたい」が若い俳優の願望のようだが、存在感のある役者とは森繁久彌や河原崎長十郎のような役者を言うべきことである。

河原崎が誰か分からなければ、山中貞雄の『河内山宗春』を見ればよい。彼はほとんど何もしていないようだが、堂々たる演技で見るものを魅了している。

役作りのあった、きちんとした女優のご冥福をお祈りしたい。

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