『映画女優』

サイレント時代から日本映画界で大活躍した田中絹代の伝記映画。
脚本新藤兼人・市川崑・日高真也、監督は市川崑。
そっくりショーだと思い、見ていなかったが、意外に良くできていた。
前半は、女優として売り出し、京都から蒲田に来たところで、ここは母の森光子を初め絹代に頼って生活する一家が中心。監督の清水宏と密かに結婚するが、互いにわがままな二人の結婚は、1年で破綻する。
後半は、監督溝口健二との関わり。
昭和15年の『浪花女』で溝口と出会った絹代は、今までの監督にない映画作りへの真剣さに打たれる。
最後は、昭和26年の児井プロでの『西鶴一代女』。
これは傑作なのだが、国内では全くヒットしなかったが、海外で高く評価され、その後欧州で溝口が評価されるきっかけになる。
そっくりショーと言えばそれまでだが、吉永小百合はよくやっている。
いつも批判にさらえされる彼女だが、演技は決して下手ではなく、むしろ上手い。
ここでも、田中絹代の伝法な言い方を踏まえ、よく演じている。
溝口について、新藤の本や伝記映画では、彼の異常さが描かれていたが、ここでは比較的普通に表現されていた。
溝口の近くにいた人によれば、彼は決して異常な人ではなく、人情味のある普通の人だったそうだが、私もそう思う。
でなければ、あれだけの厳しい演出にも関わらず、多くのスタッフ、キャストが付いてきたはずがない。
NHKBS2で。

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