テレビで水戸黄門と言えば、東野英治郎ら地味な役者が多いが、映画では月形龍之介、森繁久弥、古川ロッパらのスターが演じ、ここではなんと長谷川一夫である。
助さんは、市川雷蔵、格さんは勝新太郎。
そして、仙台で起きた殺人事件がアイヌに関係があり、蝦夷地、すなわち北海道に行く。勿論、ロケは東映の『宮本武蔵』でもおなじみの明野駐屯地や琵琶湖周辺らしい。たけしが、心配するまでもなく、ご老公は北海道に行けるわけがない。
そして、驚くのは、長谷川一夫は水戸黄門とアイヌの酋長シャクシャイン、市川雷蔵もアイヌの若手頭領、そして長谷川の息子の林成年も、松前藩主と、アイヌ人シャクシャインの父と結婚した日本人の母を女形で演じるのだ。つまり、主役3人が二役。
世界の映画で二役は多いが、3人の主演が二役を演じる映画など、聞いたことがない。まさに歌舞伎の世界である。
だが、監督は渡辺邦男で、なかなか面白い。
そして、早稲田大学時代は浅沼稲次郎らと共に、建設者同盟を作ったマルクス・ボーイだった渡辺邦男らしく、アイヌに好意的なのはさすが。
悪いのは、例によって藩の家老石黒達也と回船問屋の小堀明男らで、最後は長谷川、雷蔵、勝らに討たれ、めでたしめでたしになる。
私は、石黒達也という悪役が大好きで、この人が出てくると、とてもうれしくなる。
この時期の長谷川一夫の映画は、市川雷蔵や勝新太郎が大抵出ている。
それだけ長谷川の人気が落ちていたので、何とか若手と組ませていたのだろう。
東映では、中村錦之助が、日活では石原裕次郎が、東宝では加山雄三等の若手スターが活躍していたのに、大映はなんとも老齢化していた。
その結果が、1971年の倒産になる。
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