日本の芸能界で世襲と言えば、典型は歌舞伎だが、必ずしも世襲ですべてをやっているわけではない。
例えば、六代目尾上菊五郎の唯一の男子だった尾上九朗右衛門、彼は大根役者だった。
歌舞伎、映画、初期のテレビ等に随分出ていて、相当なインテリだったらしいが、「大根は大根」、結局六代目の名跡は継がせなかった。勿論、自分を分かっていた彼のこと、その気もなかったのだろうが。
たまに、追善公演に顔を見せていたが、晩年はアメリカの大学で歌舞伎を教えていて終わった。
六代目の養子尾上梅幸の息子・尾上菊之助に七代目尾上菊五郎を襲名させた。
逆に、下の役者でも腕があれば登用されたこともある。
現在の十八代目中村勘三郎の父、十七世中村勘三郎は、中村歌六の妾の子だったが、本妻の子等より上手かったので、名跡を継ぎ、十七世中村勘三郎になった。
要は、実力のないものは観客も納得しないので、意外にも実力の世界なのだ。
今一番人気の坂東玉三郎は、守田勘弥の子になっているが、元は関係のない普通(料亭だったから一応花柳界だが)の生まれであり、先代の尾上松禄の祖父も普通の人だったが、芝居好きで役者になったのだそうだ。
意外にも、門閥以外からも役者を入れている。
安易に歌舞伎は世襲、門閥だとバカにしていると間違いになる。