朝日新聞土曜日版・BEに人生相談「悩みのるつぼ」がある。
先週は「教え子の女生徒が恋しい」という高校教師の相談に、車谷長吉が答えていた。
「女子生徒が恋しくて仕方ないが、どうしたら良いか」という相談である。
これに対し、「車谷は、女生徒と出来てしまえばそれで良い」とし、「そこで人生が破綻すれば、そこから人生が見え、本当に始まる」と答えている。
彼は、人生は生まれたときに始まるのではなく、生が破綻したときに初めて始まり、大部分の人は、そうした体験を経ずに生き、そのまま死んでしまうとも言っている。
さすが、最後の私小説家だけはある。
彼が言っているのは、「ドラマを本当に経験することはそう容易じゃないよ」ということである。
確かに、人生に波乱万丈のドラマない方が良いに決まっている。
無駄なドラマなど経験せず、平坦に生きていれば、それは誠に幸福というべきである。
平凡でドラマのない人生こそが、本当の幸福である。
太宰曰く、「家庭の幸福は諸悪の根源」は、全くの嘘であるのだから。