なんと14歳で結婚!  『かあちゃんと11人の子ども』

シネマ・ヴェーラの五所平之助特集、1966年の松竹作品、主演は左幸子と渥美清夫婦、さらに久我美子、稲野和子、十朱幸代、倍賞千恵子、内藤武敏、佐藤英夫、工藤賢太郎、田村正和、藤岡弘、左都枝らの子どもたち。

これは、伊豆の土肥村での実話で、東京だが私も五人兄弟だったし、当時5人兄弟は別に珍しくはなかった。
だが、11人兄弟と言うのは多分珍しい。
だから映画にもなったわけで、大正14年に渥美清の吉田家に嫁入りした左幸子は、翌年から戦後に至るまで、次々ぎと子どもを生む。
以前、「女は子どもを生む機械」と言ってクビになった大臣がいたが、当時女性はそのように見られていたのは本当である。
この吉田家は、資産家ではないが、後には牛を飼って酪農をするなど、ただの農家ではないようだ。
第一、左の14歳の結婚は、「足入れ婚」だった。

足入れ婚とは、正式の結婚の前に、非公式に嫁入りして結婚生活をするもので、そこで上手く行けば正式に結婚式を上げると言うものである。
ろくに互いの顔も見ずに結婚した当時で考えれば、互いの相性を試す上では賢明な方法だったと言えるかもしれない。
また、裏返せば女性の処女性は、特に価値あるものとは見なされていなかったことの証明でもある。
ここでも、すぐに左は妊娠し、そこで正式に盛大な結婚式が上げられる。
勿論、子どもを孕んでのもので、今で言えば「できちゃった婚」である。

そして、次から次へと子どもが生まれ、時代も日中戦争から太平洋戦争、敗戦となるが、その間も左は子を産み続ける。
ある子は、「学校の書類に全部兄弟を書けなくて恥ずかしかった」と言う。
これは、一種の戦争への抵抗のようにも思えてくる。
勿論、渥美・左夫妻にはそんな考えは毛頭もなく、渥美は二度の応召に従うのだが。

さて、この映画、現在の日本の少子化対策に大きな示唆を与えているように思えた。
左幸子は、14歳から多分30を越えるまでずっと出産したのだ。
それに対して、現在では男女の平均初産年齢は、男女とも30歳に限りなく近づいている。
これは何を意味しているのか。
つまり、一番性行為がしたい、10代、20代のときはセックスができないことを意味しているのだ。
これでは子どもが増えないのも当然である。

そこで対策はただ一つ、若年層の結婚を増やし、一番性行為のしたいときに大いにやらせ、子どもを作らせることである。
そのためには、共に大学生で結婚しても十分に生活できるような条件を整備することが必要である。
それには、一律2万6千円などではなく、欧州並みの子ども手当てを増額給付し、子どもができても学生生活等ができることを促進すべきだと思った。
シネマ・ヴェーラ渋谷

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コメント

  1. ほんだ より:

    Unknown
    >一律2万6千円などではなく、欧州並みの子ども手当てを増額給付し、子どもができても学生生活等ができることを促進すべきだと思った。

    若者を中心としたベーシックインカムみたいなものも検討の対象になってくると思います。

    いわゆる「働き盛り」の年代も含んだベーシックインカムは、「働けるのに働く気の無い奴に政府が金を支給するのはけしからん」という論調が大勢を占めるでしょうが、大半が学生の年代の若者なら、そもそも「働いていない」のですから、その種の批判は若干緩和されるでしょう。

    「大学生活は、子どもと共に」のような状況は「アリ」だと思います。
    比較的自由な時間が大学生にはありますからね。

  2. さすらい日乗 より:

    一番不幸なのは
    不幸なのは、最もセックスしたいときにやれず、衰えた頃に結婚して子作りすることである。
    肉体的にも若いときに子供を作った方が楽で、強い子になると言われている。
    子ども手当てが何故かくも不評なのか、信じがたい気がするのは私だけだろうか。

  3. 少子化対策
    出産した時、出産手当、例えば100万円、がもらえると、出生率が増加することが知られている。
    子ども手当ては、全く少子化対策にはならない。