噂には聞いていたが、実に面白い映画だった。
1958年にオーソン・ウェルズの脚本・監督・出演で作られた問題作である。
アメリカとメキシコの国境の町、メキシコの検事のチャールトン・ヘストンがアメリカ人の妻ジャネット・リーと共に新婚旅行やって来ると、町の中で車が爆発する。
メキシコの建設会社の社長の車が、ストリッパーの女を乗せたまま時限爆弾で爆破されたのだ。
すると町の保安官オーソン・ウェルズがやって来て、強制的に見込み捜査を始めてしまう。
ヘストンは、偶然に見た靴箱が空だったのに、そこからダイナマイトが発見されたとの証拠が上げられたことから、ウェルズの捜査に疑問を持つ。
ジャネット・リーは、郊外のモーテルに避難するが、そこも異常な場所で、出てくるメキシコ人の若者は皆ジャンキーである。
ヘンリー・マンシーニの音楽も、ラテンやチカーノを使って異様な雰囲気を醸し出している。
ヘストンとリー以外の人物は、皆デフォルメされた異様な容貌と表情で、イカレた連中であることがすぐに分かる。
ヘストンは、ウェルズの過去の捜査資料を調べ、いつも違法捜査であることを確信する。
一方、リーは、モーテルにいるところを襲われ、町のホテルに連れ込まれ、麻薬を注射され、ジャンキーのように見せられる。
最後、勿論ウェルズは破滅し、ヘストンは勝つ。
だが、爆破犯人は、見込み捜査の通りの、社長の娘と結婚した靴屋の使用人だった。
実にスピーディーで、迫力ある映像が最初から最後まで畳み掛けてくる。
その面白さは、鈴木清順の傑作『野獣の青春』よりも面白いと言えば、その凄さが理解できるだろうか。
この作品だけで、監督のオーソン・ウェルズは世界映画史に残る大監督である。
NHKBS2