江戸の侠客、幡随院長兵衛を主人公とする映画3本放映された。
松竹30周年という1959年の『大江戸五人男』、1959年の『花の幡随院』、さらに1958年に大映で作られた『命をかける男』
それぞれの主人公の幡随院長兵衛は、阪東妻三郎、松本幸四郎(先代)、長谷川一夫で、その相手役の水野十郎左衛門は、市川右太衛門、二回目は少々劣るが森美樹、三作目は市川雷蔵である。
また、本当は時代的に異なるので、おかしいのだそうが、幡随院長兵衛の家の食客となる美少年は、高橋貞二、津川雅彦、そして川口浩、さらにその相方で吉原の花魁小紫は、花柳小菊、嵯峨三智子、近藤恵美子である。
監督は、松竹は大曽根辰保と伊藤大輔、大映は娯楽映画が多い加戸敏だが、主演作品では長谷川一夫は、脚本、配役から美術に至るまで自説で通したそうなので、長谷川一夫が本当の監督かもしれない。
長谷川の相手役となる山本富士子がとても良いが、これなど長谷川の手とり足とりの演技指導のおかげだろう。
要は、長兵衛の町奴、江戸っ子としての心意気を示すのが題目なので、いかに格好良く演じて、見せるかになるが、3人ともサマになっている。
そして、水野以下旗本白柄組の横暴を描くが、これは明治時代になって書かれた狂言であることを割り引いて考える必要がある。
河竹黙阿弥が、これを歌舞伎で書いたのは、江戸時代ではなく、明治19年である。
だから、ここには明治の維新の御代が良い時代で、徳川の武士、特に旗本が威張っていた時代は良くなかったという時代の風潮が強く反映している。
本当に旗本や武士が横暴で威張っていたかは、よくわからない。
少なくとも、江戸中期以降は、江戸をはじめどの藩でも武士は、藩の行政を司る現在の地方公務員のごとき存在になっており、無制限に武力で農工商を圧迫していたわけではない。
3本ともいずれも面白いが、個人的には松本幸四郎主演のが、配役が豪華で一番良かったと思う。
また、幸四郎が一番町奴の頭領という感じがする。
配役も、白井権八が津川雅彦と適役で、相方の小紫の瑳峨三智子は、最も花魁らしく見える。
ただ、水野十郎左衛門が森美樹と言う、当時は松竹京都でナンバーワンだった大根役者なのが残念なところである。
森美樹は、この頃は瑳峨三智子と一緒だったはずだが、後に別れ、森は若くして自殺してしまう。
実は、権八は、故郷の因州鳥取に恋人を残して江戸の来たのだが、その権八を追ってくる娘は中村玉緒をわざわざ大映から呼んで来ており、最後に水野以下の旗本に、切腹、お家断絶の上意を伝える役人は、田村高広という豪華さ。
大映のでは、長谷川一夫の長兵衛に女房はいなくて、山本富士子が長谷川の恩人の娘で手を出さないという不思議な関係になっている。
松竹の2本での長兵衛の女房は、いずれも山田五十鈴で、これは実に貫禄充分。
チャンネルNECO