『See You  海へ』

脚本の倉本聡は好きになれないので、見ていなかったが、正解だった。
前にも書いたが、私は車にまったく興味がないので、いくらカー・レースの映像が続いても興奮できない。

パリ・ダカール・ラリーに参加する高倉健以下、三菱自動車チームの話で、ロード・ムービーである。
そこに、高倉といしだあゆみ、さらにフィリップ・ルロアとの奇妙な三角関係、またレースに参加した人気タレントの大橋吾郎を追いかけてくる女性歌手桜田淳子の竹井夕子のストーリーが絡むというものであるが、少しも面白くない。

唯一笑ったのが、桜田淳子の竹井夕子が隠れて逃げてきたことが分かり、チームの若者が大騒ぎしていると、高倉健が、
「竹井夕子って誰だ」と聞くところだけ。
長い間、欧州にいた高倉は、日本の芸能界を知らないのだ。

監督の蔵原惟繕のロード・ムービーには、大傑作の石原裕次郎と浅丘ルリ子の『憎いあンちょくしょう』、さらにまあまあだったサファリ・ラリーを舞台にした『栄光の5,000キロ』もあるが、これらはどちらも主人公の石原裕次郎自身がドライバーなので、物語にドラマがある。
だが。ここでの健さんは、ドライバーではなく、レース車を援助する後方のメカニックなので、ドラマは一向に盛り上がらない。

桜田淳子がいきなりラリー現場に現れるのも不思議で、ビザはおろかパスポートも持たずに来たらしいのだから、すごい。
最後、いしだあゆみの車が爆発してしまうのも説明がない。
適当にムードで理解しろというのだろうか、倉本大先生。

ダカールで、桜田淳子と大橋吾郎が愛に結ばれ、マスコミからインタビュされる。
これは『憎いあンちょくしょう』のラストシーンを思い出すが、少しも感動的ではない。
蔵原惟繕監督作品は、嫌な言葉だが、ある瞬間突然「めくるめくような興奮」が来て、異常に盛り上がるところが最高なのだが、この映画にはどこにもなかった。
唯一の価値があるとすれば、桜田淳子の美しさで、完璧である。
統一協会によって結婚引退したのは、誠に残念なことであったことを再確認した。
日本映画専門チャンネル

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