たまには新作も見る。
新宿武蔵野館は満員だった。
映画と小説がどう違い、同じなのかはわからないが、地方の高校の高校生の生活が描かれ、金曜日から翌週の火曜日までの話。
ただ、内田けんじ監督の『運命じゃない人』のように、ほぼ同じシーンが違う生徒の目で何度も再現される。
ただ、これは内田作品のように、そのことでまったく別の結果が見えてくるというのではない。
バレー部、吹奏楽部、映画部、バトミントン部など、それぞれの部員から経緯が違って見えるという具合に構成されている。
言って見れば、ジェームス・ジョイスの『ユリシーズ』的構成であり、高知のある高校の数日間の全体像を作り出すこころみだと思う。
なかで異彩を放つのが、神木隆之助らの映画部で、顧問の教師からは「お前の半径1m以内の現実を描け」の「教室劇」を言われるが、猛反発する。
彼らは、変態雑誌『映画秘宝』の愛読者で、スプラッターを愛好し、教師の指示に反して、ゾンビが学校にやってきて生徒が襲われる劇を撮影してしまう。
私は、ホラー、特にスプラッターは苦手だが、映画『キャリー』のラストシーンのユーモアとセンスは大好きな人間の一人である。
役者の演技は、きわめて自然に意図され、言って見れば平田オリザ、岡田利規的だが、上記の教室劇への反逆が総てを救っている。
この映画は、相当に映画好きに当て込まれた作品だが、私は単純に面白く見た。
劇中の吹奏楽も高知の高校のバンド演奏らしいが、最近の高校のバンドは実にレベルが高いと感心する。
新宿武蔵野館