今や、アベノミックスで経済活性化が大流行りだが、この20年間くらい日本で進行しているのはやはりリストラという名の人件費削減だろう。
世田谷パブリックシアター、野村萬斎演出、主演の『マクベス』は、リストラ・マクベスとでも言うべきものだった。
野村萬斎のマクベスの他、その夫人は秋山菜津子は良いとしても、他は小林圭太、高田恵篤,福士恵二の全部で5人の役者だけ。
それはそれで良いが、なんとも退屈というか、同じ役者ばかりなので、飽きてくるのである。
野村と秋山は流石で演技は素晴らしい。
だが、結局はほとんどこの二人の芝居になってしまうのである。
落語のけちん坊話に『片棒』があり、けちオヤジの葬式を最小限の人数でやり、早桶の片棒は三男が担ぐが片棒がいないと言うと、
死んだオヤジが「俺が担ぐ」というナンセンスである。
良い役者なら、複数の役を同時に演じられ、最小限度の俳優で劇ができると思うかもしれない。
だが、歌舞伎の並び大名でも昆布巻き女中でも、やはりいるべき役者はいるべきものなのだと思う。
脇のろくに台詞のないような役者でも、いる意味はあると思うのである。
その意味で、この芝居は成功とは言いがたいと私は思う。
そして、この世田谷パブリックシアターの持つ最大の問題は、おしゃれで知的な町世田谷区にふさわしい芝居を作ろうとしていることだと思う。
そんなことは無用なことで、要は面白い劇を作り出せば良いだけのことなのである。
世田谷パブリックシアター