渡り鳥シリーズ7作目は、ついに国内の舞台を離れ、香港を経由してタイに行く。
映画は、戦時中のタイ、ビルマ国境地帯から始まり、そこで兄弟が別れる話がある。
生き残った弟は江木利夫で、これが小林旭になる。
横浜で、なぞの男、金子信雄や藤村有弘に襲われた旭は、犯人と行方不明の兄の居所を探して香港に行き、浅丘ルリ子と会い、二人はタイに行く。
浅丘の恋人の学者は、タイで発掘調査をしていて、兄の小高雄二から書類を渡すことを依頼されていたのである。
タイに行っても、出る人間はいつもの渡り鳥シリーズの連中で、白木マリも出てきて、さすがにタイ舞踊を踊り、期待の半裸ダンスはない。
旭が歌うのは、「ブンガワン・ソロ」で、もちろんインドネシアでタイの歌ではないが、そう細かいことを言うのは野暮というものである。
インドネシアのグサンさん作詞・作曲の『ブンガワン・ソロ』は、日本でも松田トシさん以来、多くの歌手に歌われた。
だが、この小林旭のものは、例の高音程で異様なものの一つだろう。
白木マリのバックで踊るのは、三橋蓮子舞踊団で、この人は日劇にいて、戦前からアジアの舞踊をしていたようだ。
さて、筋はいつもの通りで、金子信雄は悪役で、最後は旭の手にかかって死ぬが、二つ珍しいことがある。
一つは、ルリ子の恋人が近藤宏で、真面目な学者だが、金に目がくらみ、日本軍の隠匿物資を掘り出し、「自分のものだ」と言い張って金子らと争うこと。
いつもの通りの悪漢の一味だが、旭を助ける宍戸錠が、実は戦時中に旭と別れた実の兄だと分かり、旭と錠は兄弟だということ、これには驚いた。
日活の悪役連中もタイ人役なので、タイ語を話し、字幕が出るという珍妙さ。
浅丘ルリ子の美しさが、素晴らしいが、この1961年ではまだ小林旭も美男子である。
チャンネルNECO