若松映画も、すでに21世紀の『エマニュエル夫人』なのか

台風が去って良い天気になったので、隣町の黄金町まで行き、シネマジャックで『エンドレス・ワルツ』を見る。

またしても若松孝二映画だが、これは横浜ジャズ・プロムナードに因む上映。

さて、1995年の製作だが、こなんに良い映画とは知らなかった。

1960年代末から1970年代を描いた秀作として、藤田敏八の名作『妹』に並ぶ歴史的記念碑だと思う。

話は、前衛ジャズミュージシャンとして話題をまいて若死にした阿部薫と、最後は阿部の後を追って死んだ妻で作家、女優でもあった鈴木いずみのことを描くもの。

                          

阿部の名は知っていて、新宿のニュージャズホールあたりに出ていたのも前は通っていたと思うが、演奏は見たことがない。

鈴木いずみは、元ピンク映画の美人女優で、作家としてかなり本を書いていて、文庫本でエッセイ集も買って持っていた。

今の室井弓月などよりは、はるかにましなタレントだったと思う。

前衛ジャズを私はほとんど聞かなかったが、それはコルトレーンにしろ、あの大げさな祝詞と続く吠え声の演奏が嫌いで、バカらしく思えたからだ。

当時、私は「祝詞ジャズ」と軽蔑していたが、今見てもそれは正しかったと思う。祝詞ジャズとは違っていたのは、オーネットコールマンとエリック・ドルフィーくらいだったと思う。

そして、延々と続く即興演奏、一体どこが面白いのかと思う。それに対して、この映画の中で、阿部薫役の町田町蔵は面白い返事をしている。

「神が下りてくるのを待っているのだ。どこまで行っても降りてこない時もあるが」

気持ちはよくわかるが、どうしてお前の快楽に聞くほうが付き合わなくてはいけないのだ、普通にこちらを満足させてくれる音楽をしろ、と言いたくなる。

ここでは、天地真理やおニャン子クラブの歌が対比されていて、笑える。

ともかく、ランボーから(ランボーと言っても映画のことではない)ジャック・デリダまで、小難しい理屈が並べら立てれるのが逆に痛々しい。

役者では、町田町蔵が大変な好演だが、現実の阿部薫は、このように愛嬌のある若者だったのだろうか。

鈴木いずみ役の広田玲於奈は、意外にもよくやっているが、先日の片岡瞳といい、「若松は、巨乳が好きなんだな」と思った。

脇役は非常に多彩で、室田不二男、古尾谷雅人、相楽晴子、相原友子等、今は映画界にいない俳優から、現在もお元気な外波山文明さんまで、色々と出ていてさすが若松人脈である。

黒木和雄監督の作品にATGで公開された映画『龍馬暗殺』があり、これは「新宿ゴールデン街映画」と言われたが、これももう一つのゴールデン街映画だろう。

先日の下高井戸での若松特集もそうだったが、この日も女性が非常に多く、半分位は女性だった。

かつて日本ヘラルド映画を大儲けさせた『エマニュエル夫人』は、女性向けのソフト・ポルノと言われたが、21世紀の今日では、若松孝二映画も女性向けなのだろうか。

シネマジャック

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コメント

  1. 名無しのごん子 より:

    バーカ(笑)
    抜かすのは腰だけにしな(笑)

    若者を「若者」というだけで認めようとしない自称評論家のオジサン。

    そして「世界一番、器が小さな男、指田文夫」さん。

    そして何より理屈が多いので家で子供にまるでシカトされている指田さん(笑)