『探偵事務所23・銭と女に弱い男』

宍戸錠の、『危険なことなら銭になる』以後の(あるいは『ろくでなし稼業』以降というべきか)アクション・コメディのほぼ最後の作品で、見ていなかったがかなりの傑作だった。

監督は、ヤナカンこと柳瀬観、私立探偵の宍戸錠が、銃砲店とキャバレーを舞台に密輸をしている香港系のギャングを暴くもので、やや筋が錯綜しているが、展開が早く、リズムがあり、切れが良い。

音楽の池田正義も、ほぼジャズで一貫し画面の展開によく合っている。

このややシリアスでオフ・ビートな感じは、現在で見れば鈴木清順の日本映画史上の傑作『殺しの烙印』へとつないだとも言える作品である。

探偵事務所の男は、土方弘で、助手は笹森礼子と初井言栄、この3人は、先行先品の長門裕之、浅丘ルリ子、武智豊子のトリオだが、話を上手くつなげている。

笹森礼子は、目の大きな少女で、浅丘ルリ子の後、同じような役を多く演じたが、赤木圭一郎の遺作『紅の拳銃』で記憶に永遠に残るだろう。

                          

密輸銃を扱っているのが葉山良二で、宮城・みやぐすくと言い、彼は沖縄人、実は香港から来た元国民党の中国人将校という複雑な人間になっているが、非常に哀愁があって良い。

葉山良二というと、芦川いづみを長年泣かせていた嫌な奴というイメージが強い。

だが、役者としては大変な二枚目で、石原裕次郎が出るまでは彼が日活のトップ・スターだった。

もっと生きていれば、池部良が『昭和残侠伝』で生き返ったような活躍をしたのではないかと思うと、きわめて残念である。

勿論、最後は、葉山は悪人たちの犠牲になって死に、錠は事件を解決して、めでたしめでたし。

悪の親玉の香港人は、小池朝雄で、さすがに声が素晴らしい。

阿佐ヶ谷ラピュタ

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする