見てない増村保造映画だと思ってフィルムセンターに行くが、パンフの筋を読んで、「あれっ、見たことあるな」と思うと、どこかで見ている映画だった。多分阿佐ヶ谷のラピュタだと思うが、できが良くないので、記憶に残っていなかったのだろう。
非常に変な筋で、主人公藤巻潤は、インチキ出版社の社員で、売れない政治月刊誌を出しているが、ゴロの社長山茶花究が政治家から金を貰ってやっていることになっている。
だが、実は中国人李の神山繁の密輸の片棒を担いで利益を得ている仕組みである。
そして、山茶花は、元特務機関員で、行方不明の藤巻の父も仲間だった。
彼は、山茶花の娘富士真奈美から求婚されているが、彼自身は料亭の娘江波杏子に引かれている。
その名が猿若苑で、明らかに般若苑をもじっているのが笑える。
ある夜、不思議な女町田博子が藤巻のアパートに来て、父は「明日、最終の中央線で東京を立ち、甲州に逃亡する」と言い、何も知らない藤巻は山茶花に話してしまうと、列車の中で父は浜村純に射殺されてしまう。
実は、麻薬患者の浜村は、彼らの仲間で、実は江波杏子の父だった。
最後、藤巻は山茶花らの悪事を暴き、父を殺した犯人の娘である江波と一緒になることを示して終わる。
要は、障害を乗り越えて、恋に生きる男の話だが、余計な筋が多くて、他の増村保造作品のような力強い引力に欠ける。
それに藤巻が、男でも川口浩のような「狂気」的なところがないからだろう。
フィルムセンター