神保町シアターの「桑野通子、桑野みゆき特集」
1時15分からの上映で、12時半に行くと、もう売り切れ近くの92番(定員99人)で、やっと最前列の席で見ることができた。
記録を見ると、2009年に見ているのだが、すっかり忘れていた。
最前列から見上げて見ていてつらかったこともあるが、役者の区別が分かりにくく、筋は前回同様に良く分からないところがあった。
これはサウンド版で、江口夜詩の音楽は付いているが、台詞は字幕で、要は映画説明者によって解説されながら上映されたはずで、それなら十分に理解できたのだが、弁士のいない現在の上映では非常に分かりにくくなっている。
今後、フィルムセンターには、誰でも良いから弁士の解説を付けた版を作ってもらいたいと思う。
ときどき、映画説明者の付いた上映があるが、これは非常に予算がかかるものなので、弁士付き版も作っていただければ、サイレント映画の理解も進むと思うのだが、いかがでしょうか。
筋は、東京から法学士様になって村に帰郷した男・金光将嗣、友人の藤井貢、村一番の美人川崎弘子、そして金光と川崎の婚約の噂に悲観して上京した藤井が交通事故から住み込むことになる裕福な家のお嬢様桑野通子の4人の恋愛劇で、そこに桑野の家の運転手の妹坪内美子が絡んでくる。
東京、ジャズ、車、カフェ等が出てくる劇であり、昭和初期の「トレンディー・ドラマ」である。
いろいろとあるが、最後に金光と桑野は、船で洋行し、藤井と川崎は列車で故郷の村に向かう。
ここでは、193年と言う、昭和9年の時代的な意味、当時の日本社会を覆っていた「西欧的な都市文化と日本的な村の伝統精神」との分裂が示唆されているとも言え、意義のある作品だと思う。
神保町シアター