今、首都圏では桜が満開で、どこも多くの人でにぎわっている。
桜と花見が出てくる映画を思いだしてみる。
なんといっても第一は、1983年の東宝映画で、市川崑監督の『細雪』だろう。原作では平安神宮だが、映画では広沢池で、美しい桜は全部造花だそうだが、凄い。
岸恵子、佐久間良子、吉永小百合、古手川祐子の四姉妹と石坂浩二が出ている以外の画面は、本物の桜である。
私が一番好きなのは、大岡昇平原作、川島雄三監督の『花影』で、主人公池内淳子が、元愛人の池部良と久しぶりに再会し、青山墓地の夜桜を見る。
これも勿論造花だが、岡崎宏三のカメラが素晴らしい。
モノクロでは、鈴木清順の『けんかえれじい』で、高橋英樹がマドンナの浅野順子と夜の道を歩くシーンでの桜も非常に美しい。
彼らの悲劇を示唆する、束の間の幸福と言えるだろう。