中平康の『誘惑』に感心した後、続いて『愛と知の出発』も見る。
芦川いづみ、白木マリ、中原早苗が女子高生3人組で、白木は芦川に、いわゆるS的関係を仕掛けるが、拒否される。
大映の若尾文子、南田洋子の「性典映画」的だが、同時に同級生の川地民夫との恋愛もあり、青春映画でもある。
白木マリと中原早苗の高校生姿は少々無理があるが、芦川いづみはセーラー服姿が実によく似あう。
この作品は、コニカラーで撮影されたのだが、今回はモノクロでの上映は誠に残念だが、カラーのはもうないのだろう。
コニカラーは、テクニカラーと同じ三色分解で3本の白黒フィルムに撮影して合成するもので、浅丘ルリ子のデビュー作『緑はるかに』で使用された。
色彩はきれいだったが、カメラが異常に大き重く、「お神輿カメラ」と呼ばれ、男4人でないと動かせなかせず、すぐに使わなくなったそうだ。フィルムセンターに展示されているので、ご参考までに。
話はいろいろあるが、町の不良柳瀬志郎らの暴行で、中原早苗は自殺してしまい、白木の病院の医師小高雄二の悪行によって、あわや芦川いづみも危うしとなるが、彼女は無事逃れるが新聞に虚偽の記事を書かれて、自分の潔白を証明しようと自殺を決意する。
同意した川地と一緒に二人で山に登る。
「これは吉永小百合と浜田光夫の名作『泥だらけの純情』のような心中ものか」と思うが、最後山の頂上で御来光を見た二人は、再び生きて行くことを誓う。
思い詰める表情が良い吉永小百合とは異なり、芦川には思い詰める表情はないので、心中はふさわしくないのだ。
川地の元軍人らしい父親が永田靖で、芦川の父宇野重吉が教師だと聞き、
「日教組か!」には場内大爆笑だった。
因みに永田靖は、共産党支持者で有名だった。
神保町シアター
コメント
男性ファンの「憧れの映画女優」は百人百様で、「この女優が最高」と言う人がいるかと思えば、「その女優は鼻持ちならない」と逆のことを述べる人がいるが、芦川いづみさんだけは「タイプでない」とか「キライだ」とか言う男性ファンは聞いたことがない。
それほど芦川いづみさんの美貌は全男性の心を奪って離さない。
勿論、(どうでもいいことですが)小生の「憧れの女優」も芦川いづみです。
それでは、芦川いづみの「ナンバー・ワン作品」は何かとなれば、小生はためらうことなく「その人は遠く」(日活 1963年 堀池清監督 白黒作品)を挙げます。
いづみさんの「絶美」は白黒画面の方が一層際立ちます。カラーでは彼女の真の「娟麗さ」は十分に投影されないと思います。
「その人は遠く」のラストの列車での別離は後世に残る名場面で、このシーンだけでもこの映画を見る価値があると思います。
現在、まったく忘れ去られた堀池清監督について語れるのは「さすらい」様ぐらいではないでしょうか。
このブログにも堀池清監督についての記事が2~3ありましたが、残念ながら「その人は遠く」の言及は見当たりません(なにしろ「さすらい」様のブログ情報は膨大で、どこかに載っているのかも知れませんが)。
もう一本彼女の代表作を挙げるなら、万人の認める「トニーが格好良かった、いづみが美しかった」の「霧笛が俺を呼んでいる」とならざるをえない。
この作品は意外や79分と短いのですね。それでも超名作です(映画は長ければよいというわけではありません)。
それでも、トニーといづみが哀愁(横浜)の街を二人で歩くシーンを情景たっぷりに主題歌メロディーと共にもう5分でも織り込んでいてくれたら、と悔やまれてなりません。
これは横浜を舞台にした最高にロマンチックな映画だと思います。
「さすらい」様に是非このロケ・マップを書いていただきたいのですが。
ラストで二人が別れたあの霧に咽ぶ埠頭はまだあるのでしょうか。
芦川いづみは、女性のファンも非常に多く、吉永小百合も憧れの人だと言っています。
彼女の最高作は、やはり『ガラスのジョニー・野獣のように見えて』だと思います。
知恵遅れの役を嫌味なく演じているのは大したもので、函館競輪場などの間宮義雄のカメラも素晴らしく、桂木洋子の遺作でもあります。
『霧笛が俺を呼んでいる』は、山下ふ頭です。
当時はコンテナ化以前の横浜港が一番忙しかった時代で、山下ふ頭の全盛期で、鈴木清順の『東京流れ者』のタイトルも山下ふ頭です。今ももちろんあり、埠頭の中に入ることはできませんが、山下公園から十分に見られます。
『その人は遠く』は、半分くらいしか見ていません。部屋のどこかにあるはずですが、出てきません。そのうち探して最後まで見てみます。