賭博で辞職した市会議員

横浜市会にTという民社党の議員がいた。本当は自民党から出たかったのだが、当時戸塚区には複数の自民党議員がいたので、民社党から出たのだ。

出は農家で、大地主とまではいかなかったが、父からそれなりの土地を相続したようで、その金で賭け事にはまった。

サラ金等から多額の借金をして、街宣車が自宅周辺を「金を返せ」と騒いで廻っているという噂だった。

ある日、T議員が大きなカバンを持って市会事務局に現れ、庶務係長に「これを預かってくれ」と言い、係長は金庫に入れた。

今では、こうした行為自体が問題になるだろうが、「5000万円というのだから驚いたね」とまじめな係長は言っていた。

後に聞いたところでは、サラ金が「預かっている金はないか」と事務局にも来たそうである。

そして、数週間後、突然市役所の現れたT議員は、記者会見を開いて、議員を辞職した。

だが、この会見は彼の独り舞台で傑作だった。

「俺は、100万円以下のケチな勝負はしない」などと豪語していたが、本当だったのだろうか。

彼は、知り合いには飲み食いなど、大いに奢っていたとのことなので、嘘ではなかったのだろう。

俗に、「飲む、打つ、買う」を男の三道楽というが、阿佐田哲也さんによれば「一番身を亡ぼすのは打つの博奕だそうだ」

その理由は、飲むと買うは肉体的限界があるが、打つは肉体の限界がなく、いくらでも続けられるので、莫大な金額になってしまうからだそうだ。

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