1957年、加藤泰の東映での初監督作品、主演は大友柳太朗で、江戸で医者をやっているが、元は松代藩の藩士だった。
場所は不明の座敷から女(長谷川裕見子)が誘拐され長持ちに入れられて運ばれ、地中に埋められそうになる。
その時、女が生きていることに一人が気付き、暴行目的で長持ちから出したことろに、大友が通りかかり、女を救い出す。
だが、彼女はオランダ渡りの麻薬で眠らされていて、目が覚めると精神がおかしくなっている。
原作は、山手樹一郎で、話は次第に松代藩のお家騒動であることが分かってくる。
そこでは、将軍の落し種が、幕府の政争で藩主になっている。このお飾りの藩主を、側室とその用人が藩を牛耳っており、ついにはお世継ぎに二人の間の子を擁立しようと悪巧みを運んでいる。
いつもは悪家老の薄田研二が善玉の家老で、やや違和感があるが、大友と協力して藩から悪を一掃するというもの。
原作が山手樹一郎なので、明朗時代劇のはずだが、加藤泰の資質ではないので、少し違う感じがする。
後年の加藤泰の特徴のローラングルも、長廻しもなく、ともかく東映での初監督を無難に努めようとしている。
一番驚いたのは、松代に行く途中、急に雨が降り出し大友と長谷川は田舎の一軒家で雨宿りする。すると近くに大きな落雷がして、その衝撃で長谷川の精神が元に戻ってしまうこと。
まるで、精神分裂病の電気ショック療法みたいだった。
電気ショック療法は、1960年代まで日本の精神神経科では行われていたもので、他には脳の一部切除のロボトミー手術などの凄いものもあった。
大友柳太朗は、芝居も台詞も下手だが、人の良さが出る役者で、『怪傑黒頭巾』等で人気があり、東映最初のシネマスコープ作品の『鳳城の花嫁』では主役にされた。
理由は、「ドン太郎の大友ならコケても問題ないから」だったそうだが、無事勤めてヒットさせており東映に結構貢献している。
最後、自殺したというのは、本当にまじめな俳優だったからだと思う。
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