横浜美術館で篠山紀信展を見たのち、横浜ブルグ13に行くと、『ラ・ラ・ランド』が初日で上映されている。
昔、J・P・サルトルの脚本で『賭けはなされた』という映画があった。別々の理由で死んだ男女が死後知り合って愛しあう。二人は生き方を変えてみるが、やはり元の死に行きつくという映画であり、私はテレビで見ただけだが、なかなか面白い作品だった。
マキノ正博と片岡千恵蔵、沢島忠と中村錦之助の映画にも、同様のものがあったと思う。
『ラ・ラ・ランド』のラストも、そうした趣向である。
ロスで女優を夢見てテキサスから来た女とジャズ・ピアニストの男が出会い、愛し合う。
男は、かのショーン・Kに、女は『アリー・my love』のキャリスター・フロックハートによく似ていて、見ていて非常におかしくなった。
男が、ジャズが最高で、フュージョンやサンバは駄目と言っているのが理解できないが、まあアメリカ人の思い込みなので、一応許そう。
ミュージカルなので、冒頭から大群舞があり、その感動は相当なものである。歌は本人が歌っているのかは不明だが、踊りは本人たちのものであり、さすがに凄い。
フランスの『ロッシュフォールの恋人たち』を思い出すだろうが、私には鈴木清順の『野獣の青春』のアクション・シーンの感動を思い出させた。
また、主人公が車で去るシーンで花びらが散るのは、やはり鈴木清順の映画『けんかえれじい』の高橋英樹と浅野順子が、華麗な夜桜の下を歩む場面を想起させた。
ショーン・Kは、ジャズクラブを作るのを、女は女優になるのを夢見ていて、互いに励まし努力するが・・・という筋書きで、ラストは『賭けはなされた』のようになってしまう。
そこは結構苦い味がある。
アカデミー賞を独占することはできなかったようだが、21世紀のハリウッドのミュージカル作品として歴史に残るものになるだろう。
横浜ブルグ13