長塚圭史『アジアの女』

長塚は、阿佐ヶ谷スパイダーズの活躍で有名だが、見たことがなかったので、新国立劇場に見に行く。
近未来の東京、大震災の廃墟に兄妹(富田靖子、近藤芳正)が住んでいる。そこに作家の男(岩松了)が来る。
さらに富田に気のある警官(菅原永二)やボランティアの幹部峰村リエらが絡んでくる。

特に驚く展開や視点はなく、どこかで見た話のよう。
長塚は多分に旧左翼的であり、特別に優れた感覚性やものごとへの強い拘りはないようだ。演出は、上手で巧みだが、胸に迫るものはない。
この人は、秀才なのだろう。その意味では、作家というより演出家である。

役者としては、富田は可愛く良くやっていて、近藤も達者。
いつものことだが岩松の、本当は手抜きなのに意味あるように見せる居直り演技が不快。峰村はもう少し本気で芝居した方が良いのではないか。

この芝居は、去年の最低作岩松了作・演出の『マテリアル・ママ』よりは遥かにましだったが、この程度の劇が新国立劇場では泣きたくなるのは私だけだろうか。

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