木下順二死去

劇作家木下順二氏が亡くなられたそうだ。
今年、4月に東京裁判をテーマにした『審判』を見た。
東京裁判の裏で行われた「昭和天皇免責問題」の裏工作は、現在では詳細が明らかになっているので、感銘は余りなかった。だが、真面目な作風には大変感動を受けた。
今や、軽薄、お笑いの時代で、木下順二など見向きもされないかも知れない。
だが、『夕鶴』と『風浪』は、恐らく今後も長く残るに違いない。

高校時代、私は演劇部(正確には文化部演劇班)にいて、文化祭で「高校演劇台本」にあった作品を猛稽古してやった。
ところが、2年生のあるクラスが木下順二の『夕鶴』をやった。
主人公の「つう」が、日本的な美形だったこともあり、この公演は大成功で、演劇部は全く形無しであった。
木下順二の作品は、民話劇というのは、少々無理なところもあるが、素人がやっても結構形がつくいい作品が多い。

近年の高校・中学の演劇では、創作劇が主流らしいが、創作劇をやれば自分たちの言いたいことが表現でき、既成の脚本では表現できないと思うのは、大間違いである。
そのことは、音楽では、シンガー・ソング・ライターとしての才能がある人は別として、クラシックでもポピュラーでも既成の曲の演奏、コピーから始まるのと同じである。
すべての人が、モーツアルトやビートルズではないのである。

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