『お吟さま』


期待せず録画した『お吟さま』を見たら、なかなか面白かった。
田中絹代監督、有馬稲子主演、撮影宮島義勇の時代劇大作で、話題にはなったが評価は低い作品である。しかし、今見ると時代劇メロドラマとして結構いい映画である。
脚本の成沢昌成は、溝口健二に私淑していたこともあり、最後の『赤線地帯』の脚本家でもある。
よく見ると、諸所に溝口の影響がある。
お吟が、高山右近(仲代達矢)と追われて逃げるところなど、溝口の『近松物語』そっくりである。
また、前半の大きな伏線の、お吟が、磔になる女(岸恵子、特別出演)を見て、「死罪になるのに晴れ晴れとした顔をしている」と言うのも、『近松物語』のラスト、刑場に裸馬で引かれていく長谷川一夫と香川京子が堂々と死んでゆくシーンに対応している。愛に殉じて死ぬというのが戦後民主主義の恋愛イデオロギーだったのだ。

さらに妄想をたくましくすれば、『近松物語』の香川の役は、本当は田中絹代がやりたかった役だったのかも知れず、それをこの『お吟さま』で果たしたのかもしれない。
松竹京都でにんじんプロが作った作品だが、当時の日本映画の実力の高さを見直す映画である。
富士真奈美、南原宏次らが出ているが、すべて当時はにんじんプロに所属していたらしい。
後に、熊井啓が中野良子主演で撮っているが、話しはかなり違うらしい。
有馬稲子と中野良子じゃ、美人のレベルが違うね。

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コメント

  1. ガゾログ より:

    有馬稲子

    有馬稲子 画像・壁紙・関連サイト情報 はなれ瞽女おりん本日のお題ははなれ瞽女おりん(1977年 監督:篠田正浩) 原作は昨年亡くなった水上勉氏の同名小説。有馬稲子主演の舞台も有名ですが、 岩下志麻ファン&映像大好きののろには、映画版おりんの方が心に沁みるのです。