『裏窓の花嫁』

1986年に「土曜ワイド劇場」で放映された桜田淳子主演のドラマ、原作小林久三、脚本猪又健吾、監督は鷹森立一である。

桜田淳子と佳那晃子は、大学からの友人で女優を目指しているが売れず、銀座のクラブで働いている。ママは、東千秋で、義弟の鹿内孝は、店で東を助けながらピアノを弾いている。このころは、まだカラ・オケではなく、クラブやバーにはピアノ弾きがいたのである。

桜田の楽しみは、クラブに来る大学助教授の清水彰吾が住んでいる豪華マンションの部屋を自分のひどい木造アパートの部屋から双眼鏡で除き見ること。

彼女はひそかに清水に憧れていた。一度、クラブの帰りに清水の車で送ってもらったとき、すぐ近くに住んでいると知り、以来彼の日常を覗くのが楽しみになっている。

ある日、佳那に連続ドラマの重要な役が来る。祝福する桜田だが、羨ましい気持ちもある。

翌日、店からの帰り道で、桜田は清水の車に会い、マンションまで送ってもらい、誘われて部屋に入る。

助教授というには非常に豪華な部屋で、この男は一体どこの御曹司かと思う。

お茶を飲むが、それ以上にはならず、不満の内に桜田は、自分のアパートに戻る。その時、霊柩車とすれ違う。そして、夜中に男の声で「清水の部屋で女が殺されている」との電話がかかってくる。

翌日、テレビを点けると、清水が多磨霊園で死体で発見され、傍には霊柩車があった。

店に行くと、東は旅行に行っていて不在が続き、桜田に警察の捜査が迫る。その刑事は、佳那の父親の藤岡琢也である。清水が残した日記の中に、「陽子に結婚を断られた」と桜田の名前があり、争いが殺人の原因ではないかと思われたからだ。

ラストは、意外にも藤岡琢也が犯人で(刑事が犯人というのはルール違反だと思うが、藤岡は悪役もやるのでギリギリ許される)、それは大役が付いて喜びのあまり清水の部屋に飛び込んだ佳那だったが、そこで見たのは、東の姿だった。

佳那は1年前から清水の恋人だったが、それ以前の東が女優の頃から清水と東千明は関係があったのである。二人の争いの中で、東はソファーに頭をぶっけて死んでしまう。

驚く佳那は、父親を呼び出し、藤岡と清水は、死体を袋に詰め、多摩川に沈めてしまう。

だが清水は、自首するというので、藤岡は清水も殺してしまい、これを霊園に放置したのだ。

つまり、東の死体は石を詰めていたのですぐには上がらず、殺人の順序が逆になっているのがミソである。

題名の花嫁だが、これは桜田淳子にもやっとテレビ・ドラマの役が付き、花嫁姿で公園を逃げるシーンを撮影し、草むらに倒れると誰かにハンカチで鼻を押さえられる。

気が付くと霊柩車のお棺の中で、目覚めると藤岡と佳那がいて、藤岡は桜田も殺そうとする。だが、佳那は、桜田だけは殺さないでと懇願し、その時藤岡の部下だった加納竜らが周囲を包囲していたのだ。

藤岡の上司の刑事が声も演技も特徴的で誰かと思うと、幸田宗丸だった。この人は決して上手い役者ではなかったが、個性的な俳優の一人だった。

もう一つ、藤岡が死体を運ぶのに霊柩車を使ったのは、霊柩車は警察も検問しないことで、これは初めて知った。

佳那晃子は、はじめは大関優子の名で清純派として出ていたが、1980年の高林陽一監督の映画『ザ・ウーマン』の時に名前を変えて肉体派に転向し、悪女役でテレビの出ていた。

これを見ても、桜田淳子はいい女優だったと思うが、統一教会は罪深いなと改めて思う。信教は自由なので仕方ないところだが。

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