指田文夫のおすすめ、というよりも気に入った本、CD,DVDなどです。 いくらでもありすぎるので、5本以内で(映画は越えていますが)上げました。なにかのご参考にしてください。とりあえず思いつくままにリストアップしたので、これから追加、修正していきます。
本
- 『アフリカの日々』 アイザック・ディネーセン 晶文社
- 『俘虜記』 大岡 昇平 新潮文庫
- 『幸四郎三国志』 千谷 道雄 文藝春秋
- 『歌舞伎と文楽』 岡 鬼太郎 三田文学出版部
『アフリカの日々』は、これぞ散文という見本のような素晴らしい小説です。ハリウッドでは『愛と哀しみの果て』として、昨年亡くなったシドニー・ポラック監督、メリル・ストリープ、ロバート・レットフォードの共演で1988年映画化されアカデミー賞も多数受賞しています。
大岡昇平の小説には、『野火』『花影』など素晴らしいものが沢山ありますが、やはり自身の体験を描いた『俘虜記』は、近代以降の日本が経験した最大の事件である太平洋戦争を描いた記念碑的作品です。
『幸四郎三国志』は、先代松本幸四郎(初代松本白鸚)の狂言方(文芸部)にいて、1961年の松本幸四郎一門の松竹から東宝への移籍に伴い東宝演劇部で活躍した著者による、裏側から見た歌舞伎や商業演劇の世界。描写も的確で興味深いエピソードが満載されており、演劇好きには必読の名著です。
岡鬼太郎の『歌舞伎と文楽』は、古い本なので、取り上げるのは少々気が引けますが、彼の劇評を最初に知った本なのであげました。岡鬼太郎は、新聞での劇評家から後年は松竹に入り、新歌舞伎の作・演出もした方で、大変厳しい劇評で有名でした。
CD
- 『スモール・サークル・オブ・フレンズ』
ロジャー・ニコルス&スモール・サークル・オブ・フレンズ A&M - 『セット』 ユッスー・ンドール バージン・ジャパン
- 『シェガ・ジ・サウダージ』 ジョアン・ジルベルト ワーナー・ミュ
ージック - 『愛しのベイルート』 フェイルーツ EMI
- 『武満徹の世界』 武満徹 東宝レコード
- 『林光の世界』 林 光 東宝レコード
1は、ソフト・ロックの名盤で、家で聞いていると家人に必ず「軟弱」と軽蔑されましたが、彼らやカーペンターズは、アメリカのポピュラー音楽の最高峰の一つと思っています。
ユッスー・ンドール、ジョアン・ジルベルト、フェイルーツは、ワールド・ミュージックで、一般には馴染みのないものですが、聞けば必ず虜になると思います。武満と林は、共にクラシックの作曲家ですが、本人自身が大変な映画好きで、多くの映画音楽を書いていますが、抒情的な曲が多いのが特徴です。
日本映画
- 『酔いどれ天使』 監督:黒澤 明 主演:志村 喬 三船 敏郎 東宝
- 『山椒大夫』 監督:溝口 健二 主演:田中 絹代 花柳 喜章 大映
- 『東京暮色』 監督:小津 安二郎 主演:笠 智衆 有馬 稲子 松竹
- 『花影』 監督:川島 雄三 主演:池内 淳子 池部 良 東宝
- 『もず』 監督:渋谷 実 主演:有馬 稲子 淡島 千景 松竹
- 『ある殺し屋』 監督:森 一生 主演:市川 雷蔵 野川 由美子 大映
- 『でんきくらげ』 監督:増村 保造 主演:渥美 マリ 川津 裕介 大映
- 『あにいもうと』 監督:今井 正 主演:草刈 正雄 秋吉 久美子 東宝
- 『復讐するには我にあり』 監督:今村 昇平 主演:緒方 拳 小川 真由美
松竹 - 『嗚呼、女たち猥歌』 監督:神代 辰巳 主演:内田 裕也 角 ゆり子 日
活 - 『下町』 監督:千葉泰樹 主演:三船敏郎 山田五十鈴 淡路恵子
黒澤 明、小津安二郎、溝口健二、さらに成瀬巳喜男を日本映画四大監督と言われますが、確かに優れた作品ばかりです。
その中で、黒澤、小津、溝口については、それぞれの作品の中で私が好きなものをあげました。
『花影』の監督川島雄三では、『幕末太陽伝』が有名ですが、この池内淳子主演作の方が美しく、銀座のクラブ、バーを知り尽くした川島の本領がよく出ています。『もず』も松竹伝統の女性映画で、有馬稲子の美しさが最高です。
『でんきくらげ』はキワモノ的題名ですが、内容は女性の自立がテーマです。『あにいもうと』は、3回作られていて、どれも名作ですが、私は秋吉久美子の名演(草刈正雄も頑張っています)で今井正作品にしました。『復讐するは我にあり』は、ほとんど駄作のない今村昇平の中でも最高傑作です。『嗚呼、女たち猥歌』は、ロマンポルノの傑作で、内田裕也の名演と安岡力也との不思議な関係が魅力です。『下町』は、林芙美子原作の映画化で、1時間足らずの作品ですが、非常に深い味わいがあります。
外国映画
- 『さすらい』 監督M・アントニオーニ 主演S・コクラン A・ヴァリ
- 『ワイルド・バンチ』 監督サム・ペキンパー 主演R・ライアン W・ホールデン
- 『明日に向かって撃て』 監督J・R・ヒル 主演P・ニューマン R・レッドフォード
- 『狼は天使の匂い』 監督R・クレマン 主演R・ライアン J・L・トランティニャン
- 『唇からナイフ』 監督J・ロージー 主演D・ボガード M・ビッティ
- 『危険なめぐり逢い』 監督R・クレマン 主演M・シュナイダー S・ローム
- 『アデルの恋の物語』 監督F・トリフォー 演I・アジャーニ B・ロビンソン外国映画については、要は好きな作品です。と言っても、『さすらい』『唇からナイフ』『アデルの恋の物語』は、1回しか見ていませんが。
演劇
これはどのように入れるか。歌舞伎のような古典は別として、現代演劇では、ここに私が良いものとして上げたとしても、今それを見ることはほとんどできないからである。もちろん、近年はビデオもあり、過去の公演を見ることはできる。しかし、演劇はまさに今ここで行われているものであり、時代、社会、そしてその時の配役等によってみな異なるものであり、それを見たからとっ言って、それを理解したことにはならないからである。以下にあげるのは、一応その時に私が良いと思った公演であり、私の中の記憶にすぎないのであるのだが。
- 唐十郎作・演出 『風の又三郎』 1973年 夢の島
- 蜷川幸雄演出 清水邦夫作 『泣かないのか、泣かないのか、この1973年のために』 1973年 アートシアター新宿文化
- 蜷川幸雄演出 樋口一葉作 『にごりえ』 日生劇場 1975年
- 佐藤信作・演出 『阿部定の犬』 三鷹空き地 1975年
- 栗山民也演出 ユージン・オニール作『喪服の似合うエレクトラ』 新国立劇場 1995年