松竹は、昔から「三人なんとか」というのが好きで、これもその1本、鰐淵晴子、岩下志麻、倍賞千恵子の3人だが、実質的には鰐淵晴子の主演映画。
鰐淵は、医学大生で、母親は小諸にいる高峰三枝子、益田キートンのとんかつ屋に下宿している。
鰐淵は、若き教授の河津祐介に惚れているが、そこに岩下志麻が入り込んで来るのが主な話で、脚本はこの頃の大船のエース富田義朗と菅野昭彦、監督も多作の番匠義彰なので、運びは上手くて面白い。
倍賞は、鰐淵の大学の仲間山本豊三が下宿している蛇屋中村是公(漢方薬局)の娘だが、これはコメディーリリーフなので、影は薄い。
同じ学生で大泉侃が出ているのはいくらなんでもと思うが、日活の大学生小沢昭一と同じで大いに笑える。
キートンと是公が追いかけているのが藤間紫だが、彼女は同じアパートの住人川津祐介に惚れていて、随所に出てきて笑わせてくれる。
この辺の脇役の連中は非常に上手いのはさすが。
もう一人の男は津川雅彦で、商事会社社長小川虎之助の次男の遊び人で、常務だが仕事はろくにせず女ばかりを追いかけているが、それを止めさせるためにも、小川は秘書の岩下志麻を彼の嫁にしようとする。
津川が遊びの根城のにしているナイトクラブのシーンで、スマイリー小原とスカイライナーズが出てきて、スマイリー小原が派手に踊り指揮する。
この人もテレビによく出ていたが、比較的若く亡くなったようだ。
実は、岩下は、同社の老課長の佐野周二の娘で、結婚が成立すれば、彼の退職後の天下りも斡旋すると言う。
岩下は、津川と当初は喜んで付き合うが、最後は承諾する気にならず、偶然佐野を診察したことで知合った川津裕介に引かれてゆく。
この辺は、まさに松竹・城戸四郎イデオロギーで、金持ちは否定されるのだ。
だが、最後、岩下と川津を一緒にさせるために、芝居で付き合っていた鰐淵を津川は好きになってしまい、二人が結ばれることを示唆して終わる。
鰐淵晴子は、松竹にとって実は扱い兼ねる女優で、津川も同様だったことがわかる。
邪魔者同士は一緒にしてしまえと言うことの気がする。
その意味で、松竹らしい岩下と川津を一緒にさせる物語になったのだろうと思われる。
山本豊三は、言うまでもなく名優山本礼三郎の息子で、1950年代末は松竹のスターだった。
だが、柔弱で弱々しい男は、石原裕次郎以後は、時代遅れになってしまった。今では、創価学会の中堅の会員としてご活躍されているそうだ。
阿佐ヶ谷ラピュタ