中小企業経営者の常

最近、ある事件から、昔見た映画『金日成のパレード』を思い出したのだ。
そこにはアジア的な統領、団体指導者・経営者の本質があった。
それは、統領が支配している集団について、あらゆることに口を出し指図をすることだ。

ポーランドの映画人が、1988年のソウルオリンピックに対抗し北朝鮮が行った「世界青年友好祭」に招待されたときの、ソウルを撮ったドキュメンタリーに出てくる金日成は、総てのことを指図する、日本で言えば中小企業の社長だった。

例えば、ホテルで、従業員が「首領様のご指図で」テーブルや部屋のベッドの向きを変えたことを滔々と説明する。
また、関川夏央によれば、帰還船・マンギョンボン号も金日成の指示によって、多くの人が乗れるように客室を増やしたのだそうだ。
だが、そのために船の重心が上がってしまい、転覆の危険があるので廃止された船もあるそうだ。

こうした総てを指図するのは、日本、アジアの指導者の常で、日本の中小企業の社長に極めて多く存在する。
昔、ある共同ビルの取締役会に課長の代理で出たとき、そこの社長で、某有名港湾企業の老社長は、その共同ビルの電球が1年間に何個切れるか熟知していて、その年は「去年の買い置きがあったので、支出が今年はなかった」と大真面目に報告しているのに驚いたことがあった。
その老社長は、戦後の横浜の港湾業界の有名人であり、立派な方だった。彼は、会社の総てを把握しているのである。
しかし、社長がそんなことでは、部下に権限を委譲することなど一切なく、その企業は絶対に大きくならず、未だに中小企業に甘んじている。

ところで『金日成のパレード』だが、今は少し大きなレンタル店にはあるだろうが、絶対に5分に一度は爆笑してしまう作品である。是非、ご覧を。

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