上杉隆の話題の本である(新潮社)。
「安倍政権迷走の1年」とサブタイトルされているが、近年これほど面白い本もないだろう。
安倍政権の内部が極めて綿密な取材で解明されている。
なぜ、かくも不祥事が続発し、止まらないのか、外交、年金等の失敗はなぜおきたのか。
その原因はどこにあるのか。
構造的なものか、人間なのか、歴史的背景は、・・・すべてに的確に答えてくれる。
問題の根源は、勿論安倍晋三の人間性そのものにある。
生まれたときからプリンスとして育てられたので、権力闘争と無縁だった経歴は、人間的弱さにつながる。
そして、裕福な者は貧困や努力に弱い。
安倍首相の二人の側近、秘書官の井上義行氏が極貧からJR職員を経て官庁入りし、菅前総務大臣が秋田から集団就職で来て、代議士秘書、市会議員、国会議員とたたき上げだったことがその典型的な例である。
井上秘書官や的場官房副長官、世耕報道担当補佐官の勘違いのひどさ、さらに塩崎前官房長官のミス・キャスト(政策通ではあるが、官房長官という調整役では全くない)と誤謬が指摘される。
これらを払拭して第二次安倍内閣は出来た。
だが、インド洋での給油作業が継続できなかった際の総辞職を示唆し、自らの退路を断つなど、前途はさらに多難なようだ。
結局、経験不足というしかないだろう。
前任の小泉首相は、総裁選に3回も出て、初めの2回は泡沫候補だったなど、権力闘争の経験が全く違うのだ。