一年で一番嫌な、部屋の掃除を終わり、洗面所もきれいにして見ると、なんともリアりティがない。
まるで、「汚しの前のセットみたいだな」と思った。
「汚し」と言う作業を習ったのは、大学の劇団でであった。
大道具を作って「できた」と思っていると、大道具のチーフが「これから汚しをやる」と言って、
噴霧器を持ってきて、できたパネルに墨汁液を吹きかけはじめた。
せっかくできたきれいなものを、と思ったが、確かにセットを舞台に立ててみると汚しをしないとおかしい。
特にパネルの隅などは、汚しをしないとまずいのである。
汚しは、舞台のみならず映画でも行われていて、格撮影所に汚しの名人がいるようだ。
きれいなセットは、つるつしていて現実感がないのである。
どうにも、私もきれい好きではないらしい。