以前、映画館で見たときは、あまり感動しなかったが、今回は見てなかなかすごいと思った。
話は、大藪春彦の有名な小説で、大学院の優秀な学生の仲代達矢が、実は非情、冷酷きわまる男で、殺人を重ね、自分が学んでいる大学に強盗に入り、大金を奪って飛行機でアメリカに逃亡する。
だが、今回見て思ったのは、ハードボイルド・アクションが実は、監督の須川栄三の師匠である成瀬三喜男譲りのきわめて堅実なリアリズムの描写によっていることである。
この映画の構造は、簡単に言えば、映画の裏側の殺人や強盗、さらにキャバレー・シーン等は、東宝の嘘っぱちアクションで表現されているが、表としての東野英治郎以下の刑事たちが犯人を追い詰める捜査の仕方は、徹底したリアリズムで描かれていて、それがこの映画のリアリティを保障しているのである。
前者を代表するのが、中村哲、佐藤允らのギャングのいかがわしさで、後者を象徴するのが東野英治郎や小泉博らのリアルな演技なのである。
銀座のクラブで花売りのおばあさんを仲代がからかうシーンがあるが、仲代に強制されて奇妙な歌を歌い踊るこのおばあさんがなんと三好栄子なのである。仲代が、仲間に引き込む 貧乏学生武内亨に強盗を打ち明ける中華屋の不貞腐れた店員が横山道代など、いい役者を贅沢に使っているが、この辺は、当時の東宝の役者の層の厚さである。
また、大学院生の同僚で白坂依志夫が2回出て、キザな芝居を見せている。
そして、この映画を作っていた原作の大藪春彦はもとより、脚本の白坂依志夫、監督の須川栄三らに共通していたのは、前世代、彼らより上の戦前世代への不信と怒りである。
多分、それはかの妄言大王・石原慎太郎にも共通してあったものであった。
こうした世代的気分、感情が1960年の「60年安保反対運動」となって大きな動きになったのである。
日本映画専門チャンネル
コメント
ほんの寝巻で
ボクも評価高いです。一番好きなのは『 ああ!馬鹿』でしょうか。岡本喜八を超えるナンセンスコメディーだと思います。須川は慎太郎が映画を撮ったので、20代で監督昇進をしたんでしたね。
↓宮沢りえさんはルヴォーのノラをまじかで観て、いや~細いのなんの・・・なにより大変な逸材だと思いました。