『コント馬鹿』 小説ゆーとぴあ 吉川潮

吉川潮の本は、嫌味な部分もあるが、図書館の本棚に並んでいたので読むと、意外にもおもしろかった。
所謂「マンザイ・ブーム」のとき、一時は大変な人気のあった、コント・ユートピアのリーダー、ホープの城後光義の一代記。
ゆーとぴあは、ほとんど記憶にないが、ゴム・パッチンが唯一の当りギャグだったようだ。

九州から出てきて、大阪の白木みのるの付け人から、東京の芸能界の最底辺を蠢く姿は、我々の想像を超える。
そして、ストリップ小屋の帝王、レオナルド・熊と出会う。
レオナルドは、結局59歳で死んでしまうが、こんなにひどい男だったとは初めて知った。
全盛期には、山田洋次の『男はつらいよ』にも出ていたが、とんでもない男だったとは。
なにしろ相方がを20人も代えたというのだから、とうてい半端じゃない。

ゆーとぴあも、マンザイ・ブームで一時は売れるが、お定まりの「飲む、打つ、買う」と城後の人の良さから来る莫大な借財。この辺の金銭感覚も到底信じがたい。
レオナルドをはじめ、指パッチンのポール牧も自殺する。
このポール牧も随分と表と裏が違う人だったようだ。彼の自殺も、金と女に行き詰まってのものだったらしい。
城後は還暦を過ぎるが、コント馬鹿は変わらない。

吉川潮の本では、本来の落語についてより、柳家三亀松や広沢虎造など、「色物芸人」を書いた小説の方が面白いのは、なぜだろうか。
吉川の落語家についてでは、春風亭柳朝を描いた『江戸前の男』がとても良いと思う
これは柳朝の破天荒な生き方が、実は吉川にとっては、絶対に自分ではできないものなのだからではないか。
その意味では、柳朝は、吉川の願望のようにも見える。
吉川には到底出来ないものと思うが。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

コメント

  1. おかまち より:

    面白い本です
    貴重な本ですね。ポールさんは無名の若い人の面倒もよくみていたようです。熊さんは才能は素晴らしかったですね