『女奴隷船』

1960年、新東宝で公開された大蔵貢製作の大作、監督は小野田嘉幹である。

彼は新東宝の倒産後は、テレビの時代劇作品を多作し、数年前には新作『伊能敬忠 子午線の夢』も作った。

1945年夏、日本軍は南方で米軍に敗退を重ねていたが、その一番の原因はレーダーの差だった。

ドイツ軍のレーダーの設計図の青写真を入手した南方軍は、それを中尉の菅原文太に託して日本本土に向かわせる。

この青写真が女性の肖像写真の裏に隠して印刷されているというのが泣かせる。

だが、その輸送機が米軍の戦闘機に襲われ海中に落下する。

運に良く菅原は、貨物船に救助されたが、それは日本の女性を中国に売り飛ばす奴隷船だった。

左京路子らの元娼婦が大半だったが、中には従軍看護婦と騙されてきた三ツ矢歌子もいた。

要は、従軍慰安婦で、これは、岡本喜八の『血と砂』にも出てきたし、東映にはそのものずばり『従軍慰安婦』という鷹森立一作品もある。

従軍慰安婦については、存在したことは事実で、また朝鮮人女性がいたことも本当だろう。

だが、それが強制連行だった否かは、大変難しい問題である。なぜなら、彼らには金額の問題はあろうが、報酬は支払われていたからである。

現在、教員の「駆け込み退職」が問題になっている(実際は警察官の方が多いそうだが)。

これも退職金の上乗せによるもので、実質的には「強制退職」みたいなものだが、あくまで本人の自由な選択であり、強制退職とは言わない。

となると朝鮮人遇軍慰安婦も強制ではなく、自主的な職業選択だと言われれば、それまでである。

だが、もちろん当時の経済的状況を考慮すべきであり、安倍内閣が意図していいる「河野談話」の変更は、新たな国際問題をおこすだけの愚策である。

この貨物船の女性群には三原葉子が君臨していて、自ら女王、クイーンと称している。

そこに突如海賊船が現れて襲われて破れ、海賊の首領丹波哲郎の支配の下に入る。

こう書くと分かるように、これも一種の「グランドホテル形式」であり、丹波海賊が襲ってくるなどは、完全に映画『駅馬車』のインディアンの襲来である。

そして、ある島に貨物船はつき、そこでは女のせり売が行われるが、入札するのは怪外国人。

その島が、尖閣諸島であるかどうかは不明だが。

取引成立後の祝宴では、三原葉子のベリーダンスのような踊りも披露されるが、日活の白木マリの新東宝版である。

最後、丹波の手下で、実は脱走兵だった杉江弘太郎の善玉への裏返りで、菅原や女性たちは助かり、無事に島から高速船で日本に向かう。

左京路子は、銃撃戦で亡くなるが、彼女はその後ピンク映画で大活躍することになる。

因みに、この映画が縁で小野田嘉幹監督と三ツ矢歌子は結ばれたそうだ。

衛星劇場

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