『プルガサリ』

先週の岡田則夫さんの「SP講談・太平洋戦争末期のSP」を見に行った、高円寺の田口史人さんのレコード店「円盤」で見つけたビデオ。

北朝鮮の怪獣映画で、日本では1998年にアメリカ版の不出来な『Godzilla』に便乗する形で、たぶん、若き日の堤清二氏の共産党系の人脈によるものだと思うが、セゾン系の館で公開され、私はキネカ大森で見た。

製作されたのは、1985年で当時の金正日首相じきじきのご命令によるものだったそうだ。

話は、封建時代、悪い王様の下で悪政が行われていて、地方の農民から農機具を供出させる。

農民たちは、農業ができないと抗議するが、逆に取り締まられ村の鍛冶屋は逮捕され投獄されてしまう。

彼は、抗議の意志として食物を取らず、飯を固めて人形を作る。古代から言い伝えのあるプルガサリである。

彼の遺体を家に持ってきて、鍛冶屋の娘が針仕事をしていて、針を指に刺し出血し血が粘土の人形に落ちたとき、人形は命を得て、動き出して針を食べる。

そして、鉄を食べてどんどん大きくなる。

善意の怪獣であり、大映の大魔神に似ているが、もともとは朝鮮の民話だそうだ。

このプルガサリを先頭に立てて農民は反乱を起こし、王の軍を撃退する。

アクション・シーンがいろいろあり、農民たちは最後悪王を倒すが、今度は鉄をどんどん食べるプルガサリに苦しむことになる。

すると、鍛冶屋の娘が自ら犠牲になり、怪獣を元の人形に戻してしまう。

実は、これは東宝の特技監督中野正慶氏やゴジラ役者の薩摩剣八郎氏らが行って全面的に指導して作った映画なのだ。

監督は、韓国から自ら北に亡命してきたといわれていた申相玉で、彼は後に北からアメリカに行ってしまう。

中野正慶さんの本では、監督の北への亡命は自主的なものではなく、拉致だったとのこと。

この王の悪政を倒すが、その怪獣プルガサリが鉄を食う怪獣だったために、今度は農民が苦しむというのは、北朝鮮の金王朝への明らかな批判だろう。

北朝鮮で、このような金体制批判の映画を作るとは凄い。

撮影や編集が粗雑で下手だが、粗削りな魅力のある映画だといえる。

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